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第114回学術集会(平成19年10月14日(日))
【一般演題】
妊娠・分娩・産褥(9) ビタメジン®点滴によるアナフィラキシーショックの1例
桑田 吉峰, 大口 昭英, 桑田 知之, 薄井 里英, 泉 章夫, 松原 茂樹, 鈴木 光明
自治医科大学医学部産婦人科
妊娠悪阻の摂食障害に対してビタミン添加補液が行われている.複合ビタミン製剤(ビタメジン®)投与でショックになった妊娠悪阻症例を報告する.症例は,27歳,0経妊0経産.妊娠6週頃から悪阻が悪化し,摂食障害と頻回の嘔吐が認められた.産婦人科外来でビタメジン®1A添加ソリタT1を点滴した.点滴開始直後から「気が遠くなる感じ」がでてきたが,ことばがうまく出ず,変調を周囲の人に伝えることができなかった.点滴開始30分後に全身発汗著明,意識もうろう状態,血圧82/50mmHg,SpO2 88%のショック状態で発見された.点滴変更・乳酸リンゲル液の急速輸液,下肢挙上,酸素投与などの救急処置が行われ,数分後には意識清明,血圧110/74mmHg,SpO2 99%と回復した.悪阻治療目的でそのまま入院管理した.入院後は食欲が回復し,数日後に退院となった.神経学的後遺症はない.原因検索のため,後日ビタメジン®の原末と基材を用いたプリックテストとDLST(Drug lymphocyte stimulation test:薬剤によるリンパ球刺激テスト)を行った.プリックテストではビタミンB12のみ陽性で,B1,B2,B6,ビタメジン溶解剤(マンニトール)はすべて陰性.DLSTではビタミンB12,B1及びマンニトールが陽性で,B2,B6は陰性であった.以上から本症例はビタメジン®中のビタミンB12によるアナフィラキシーの可能性が高いと判断された.ビタメジン®によるアナフィラキシーショックはこれまで18例程症例報告がある.ビタメジン®添加点滴開始後の数分間はベッドサイドで患者を注意深く観察する必要がある.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 44(3)
285-285, 2007
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