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第114回学術集会(平成19年10月14日(日))
【一般演題】
妊娠・分娩・産褥(10) 産褥期に発症したパニック障害の一例
袖本 武男, 冨尾 賢介, 安水 渚, 橋本 耕一, 星野 寛美, 斉藤 一夫, 香川 秀之
関東労災病院産婦人科
パニック障害は女性に多く見られる疾患であり,産褥期にその発症頻度が高くなるとする報告もある.今回我々は産褥期に発症し産婦人科で診断・治療を行ったパニック障害の一例を経験したので報告する.症例は30歳の女性で,第2子を当科にて正常分娩で出産した.分娩6週間後に気が遠くなる感じを主訴に当科を救急受診した.診察所見では明らかな異常を認めなかった.症状のため起き上がることも困難な状態であったため,入院精査の方針とした.入院後はめまい・無気力感・動悸等の症状も認めた.このため神経内科・耳鼻科・精神科・循環器科に診察を依頼したが,明らかな異常は指摘されなかった.症状が軽快したため9日目に退院としたが,3週間後の外来再診時にはめまいの頻度や程度が増悪していた.この時点で詳細な問診を行ったところ,本人がめまいとして説明する症状にはめまい感の他に動悸,息苦しさ,嘔気,冷感などが含まれており,パニック発作と考えられた.発作が起こるかもしれないという不安のために買い物にも出かけられない状態であることも聞かれ,広場恐怖を伴うパニック障害と診断した.本人が当科での治療を希望したため,パロキセチン投与を開始するとともにパニック障害に関する心理教育・呼吸法の指導等を行った.治療開始2週間頃より症状の改善を認めた.3カ月後にはパニック発作は全く見られなくなり,症状出現前と同様の日常生活を送ることが出来る状態となった.パニック障害が産褥期に発症した場合,通い慣れた施設であるということ,子供を連れて受診しやすいということや医療の連続性という観点などから産婦人科で治療を行う意義は大きいと考えられた.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 44(3)
289-289, 2007
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