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第114回学術集会(平成19年10月14日(日))
【一般演題】
胎児異常(1) 妊娠中に発見された先天性神経芽細胞腫の1例
松下 ひかり, 篠崎 博光, 笠原 慶充, 定方 久延, 阿美 聡明, 竹中 俊文, 峯岸 敬
群馬大学医学部産婦人科
神経芽細胞腫は小児悪性腫瘍としては最も頻度の高い小児悪性固形腫瘍であり,発症年齢によりその予後は大きく左右される.胎生15週頃の副腎髄質が形成される過程で神経節細胞が腫瘍化することによって生じる神経節由来の腫瘍であるが,胎児期に発見されることは稀である.今回我々は胎児期に超音波検査にて腹腔内腫瘍を認め,出生後開腹腫瘍生検により神経芽細胞腫と診断された一例を経験したので報告する. 症例は28歳,初産婦.妊娠37週まで胎児異常を認めなかったが,38週健診時前医にて腹腔内腫瘍を指摘され当院紹介初診となった.初診時の超音波検査にて右腎上方に32×32.6mmのsolid patternを呈する比較的高エコーの腫瘤を認めた.MRIでは右腎内上側に径3cm大の充実性腫瘍を認め,右副腎腫瘍が疑われた.他に異常所見を認めず,母体合併症も特に認めなかった.妊娠38週6日,3204gの男児をApgar9-10-10にて正常経腟分娩した.出生後超音波検査にて右副腎腫瘍が疑われ,児は精査加療目的に小児外科入院.腫瘍マーカー検査では,血清NSE 34.3ng/ml,VMA 42.54ng/ml,HVA 25.4ng/mlといずれも上昇を認めた.日齢15に開腹腫瘍生検施行し,腎門部から肝下面横隔膜脚に至るまでの一塊とした腫瘍を認め,病理組織検査にて神経芽細胞腫と診断された.生後1ヵ月より化学療法(Vincristine,Cyclophosphamide,THP-ADR)を計9クール施行し,現在経過観察となっている. 胎児期に発見される神経芽細胞腫は稀であるが,超音波検査にて上腹部腫瘍が認められる場合には神経芽細胞腫の可能性も考慮しておくことが必要と考えられた.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 44(3)
292-292, 2007
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