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第114回学術集会(平成19年10月14日(日))
【一般演題】
悪性卵巣腫瘍(2) 腹腔鏡手術により偶然発見された若年成熟奇形腫悪性転化の一例
中尾 美木, 藤本 晃久, 大須賀 穣, 矢野 哲, 武谷 雄二
東京大学女性診療科・産科
【緒言】成熟奇形腫は20〜30代の若年女性に好発する良性腫瘍で,卵巣良性腫瘍の中で最も多く認められる.悪性転化をおこすことは稀で,その頻度は約1〜3%とされる.悪性転化症例の発症年齢は閉経後に多く,その多くは扁平上皮癌であり腺癌は約15%程度と言われる.また,腫瘍サイズは良性のものと比較して大きく,一般に超鵞卵大以上とされる.今回,若年成熟奇形腫に悪性転化を認めた症例を経験したので報告する.【症例】29歳,0経妊0経産.健康診断時に径7cm大の右卵巣腫瘍を指摘され,経過観察をしていたが3ヵ月後に増大傾向を認め当科に紹介された.腹腔鏡下右卵巣嚢腫摘出術を施行し,大部分は漿液性の内容を含む単純性嚢胞であったが摘出標本の一部に5mm程度の脂肪成分を含む部分を認めた.ほとんどの部分については病理診断にて漿液性嚢胞腺腫であったが,脂肪成分を含む部分については悪性転化を伴う成熟嚢胞性奇形腫で,悪性と診断される部分は気管支上皮由来の腺癌であった.初回手術後3ヵ月後に右付属器切除および大網部分切除術施行した.摘出した右付属器に悪性細胞の残存はなかった.【考察】今回我々は,29歳と若年で発症し,腫瘍サイズがきわめて小さく,気管支腺上皮から発生した腺癌であるという臨床上稀な成熟奇形腫悪性転化の一例を経験した.この経験から,外来で若年かつ小さい成熟奇形腫を疑う卵巣腫瘍を認めた場合には,本症例のような場合もあり得ることを念頭において,慎重に経過観察する必要があると考えられた.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 44(3)
309-309, 2007
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