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第114回学術集会(平成19年10月14日(日))
【一般演題】
子宮筋腫 下肢静脈血栓に対し挿入したIVCフィルターが血管壁を穿破し,開腹により回収した筋腫分娩の一例
花岡 立也, 三木 明徳, 鈴木 元晴, 梶原 健, 岡垣 竜吾, 板倉 敦夫, 石原 理
埼玉医科大学産婦人科
【はじめに】今回,我々は筋腫分娩術前に下肢静脈血栓が見つかり,肺血栓塞栓症の発症予防のため下大静脈(IVC)フィルターの留置を試みたが不成功に終わった症例を経験したので報告する.【症例】50歳女性,3回経妊3回経産,身長156cm,体重70kg,最終月経より7日目より不正性器出血があり,近医で筋腫分娩を指摘され当院に緊急搬送され入院した.入院時HGB 6.7,腟内は筋腫と思われる腫瘤で満たされており,また下肢の痺れと疼痛を訴えていた.貧血に対し濃厚赤血球2単位を輸血し,下肢の症状に対しては静脈血栓症を疑い超音波にて精査したところ両下腿の静脈に多発する血栓様エコーを認めた.筋腫分娩は外科的に捻除する方針とし,下肢静脈血栓の治療方針について当院循環器内科へ術前相談したところIVCフィルターの留置を指示されたため,捻除術前日に当院放射線科にて留置を行った.右大腿静脈を穿刺,4F short sheath挿入しIVCへとカテーテル先端を進めたが,左右総腸骨静脈合流部を越えた付近でカテーテルが制御できなくなり回収も不能となった.直ちに心臓血管外科により全身麻酔下で開腹にてカテーテル抜去を行い,同時に経腟的に筋腫捻除を行った.カテーテル先端はIVC背側の血管に迷入したのち血管壁を貫通し腰椎前面に存在していた.術後に性器出血は認められず,貧血も改善し,経過良好のため術後21日目に退院した.【考察】膝より末梢の下肢静脈血栓は塞栓症を起こすリスクが非常に少なく,一方でカテーテル操作によるフィルター挿入は,一定の頻度でトラブルが発生する可能性がある.血栓塞栓症の予防策は個々の患者のリスクに応じて検討されなければならない.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 44(3)
328-328, 2007
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