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第115回学術集会(平成20年6月15日(日))
【ワークショップ3】
婦人科癌における癌性疼痛とその管理
橋口 さおり
慶應義塾大学医学部麻酔科学専任講師
平成19年4月にがん対策基本法が施行されてから1年が経過した.基本的な柱としてがん医療に均てん化が挙げられており,中でも疼痛緩和をはじめとした緩和医療は癌の診断時から提供されるものとされ,医療者にとって緩和医療の知識と技術を持つことは必須となっている.婦人科癌は主に骨盤内に発生し,その進展に伴い様々なタイプの疼痛を生じ得る.臓器に由来する疼痛のほか,骨盤内進展に伴う神経因性疼痛や,骨転移による疼痛,下腿浮腫による不快感,腹水による腹部の張り(患者はこの感覚も「痛み」と表現する)など,複雑な苦痛を呈するため,緩和に難渋する場合がある.臓器に由来する疼痛については,WHO疼痛管理ラダーに沿った薬物療法が基本となる.使用される薬物は非ステロイド性消炎鎮痛薬やオピオイドであるが,近年,オピオイドの種類や剤型が増え,選択肢が豊富になった.モルヒネの1日1回投与の製剤では作用発現が早くなるように,速放と徐放製剤をひとつのカプセル内に収めているものがある.また,フェンタニル貼付剤は,2008年6月にマトリックスタイプの製剤は発売され,これまでよりも最小量の半分の製剤が追加されるため,今後の用途の拡大が見込まれる.オピオイドが効きにくいとされる神経因性疼痛に対しては鎮痛補助薬が適応となるが,これまで使用されてきた抗うつ薬や抗けいれん薬は,眠気やふらつきのために投薬継続が困難な例がよくみられた.抗けいれん薬のガバペンチンは,眠気やふらつきが少なく,神経因性疼痛には効果が高いため,投与継続可能な薬剤といえる.骨転移の疼痛に対しては,放射線照射が第一選択となる.外部照射で疼痛が緩和しない場合や,多発している場合には塩化ストロンチウムの投与も考慮される.この他,麻酔科・ペインクリニックで施行される神経ブロックや,PCA(Patient-controlled analgesia:患者自己管理鎮痛法)ポンプを使用したオピオイドの投与など,様々な方法を駆使することにより,質の高い疼痛緩和が可能となる.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会誌, 45(2)
110-110, 2008
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