|
<< 学会誌へ戻る
<< 前のページへ戻る
第115回学術集会(平成20年6月15日(日))
【シンポジウム1】
日本産科婦人科学会「女性医師の継続的就労支援のための委員会」調査報告および提言
宮城 悦子
横浜市立大学准教授 附属病院化学療法センター長
2006年に日本産科婦人科学会に設置された本委員会は,女性医師が就労を中断や退職せずに働ける職場環境の整備についてその実行を促進することを目的とし,これまでに「卒後2年から16年の就労状況について」と「平成19年度新専門医を対象とした勤務状況について」の大規模なアンケート調査を行ってきた.大学医学部105施設を対象に行った勤務状況についてのアンケート調査で最もインパクトが大きかったデータは,経験年数16年までの分娩取扱い医師は,男性医師で平均約83%,女性医師では約66%で,女性医師では経験年数11年目に最低の45.6%と半分以下となっていたことである.経験年数5年毎に区切った場合,女性医師では次第に低下して11〜15年目では約52%となるが,男性医師では低下傾向はなく約80%で推移している.また,子どもがいない女性医師の76.7%は分娩を取り扱っているが,子どもがいる女性医師は分娩取扱いが半分以下となっている実態が明らかになった.さらに,平成19年度新専門医を対象とした意識調査の中で,女性医師の48%が5年後には分娩を取り扱わない施設での勤務あるいは非常勤またはパート勤務を希望しているという状況も明らかになった. この調査結果をふまえ,本委員会として(1)産婦人科医師の長時間労働を改善し,より柔軟な働き方を早急に確立すること(2)妊娠,分娩,授乳,育児等の期間に対しての代替要員を確保し,勤務医定数の柔軟な体制を確立すること(3)病院に近接する保育施設を質,量ともに確保し,医師の子弟を優先的に保育する体制を整えること,等の具体的な提言を行った.この提言は,病院設置者,医療・行政関係者ならびに一般国民に対して行い,男女共同参画社会の実現を産婦人科から呼びかけるものである.今回の調査が産婦人科医師不足の背景を具体的な数字として明らかにした意義は大きく,その実情の把握は今後早急に実行すべき効果的な対策に直結するものと考えられる.また,女性医師が継続的に就労できる勤務環境の整備は,必ずや男性医師の勤務環境の改善,ひいては学生および研修医の産婦人科志望者の増加につながるものと考えられる.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会誌, 45(2)
112-112, 2008
|