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第115回学術集会(平成20年6月15日(日))
【シンポジウム3】
女性研究者支援のモデル事業「保育とワークシェアによる女性医学研究者支援」
斎藤 加代子
東京女子医科大学遺伝子医療センター教授
【目的】女性医師が子育てのために医学を断念することは多い.さらに医学研究に携わる医学部卒業生は減少傾向にある.医学研究を遂行する女性医師の育成は本学の使命である.このような背景のもとに,指導的立場となる優れた女性医学研究者の育成を行い,医学部,病院における育児支援と女性医師支援のモデルを育成する目的で,文部科学省科学技術振興調整費を受けて本事業を実施している. 【実施状況】女性医師のキャリア形成において,必要なことは1)子育て支援,2)勤務環境の改善,3)生涯教育・再教育の支援が挙げられる.本事業では,平成18年7月に「女性医学研究者支援室」を設置し,「保育支援」「研究支援」のシステムを構築した.「保育支援」としては,本学の院内保育所に「病児保育室」を導入した.看護師1名,保育士2名が担当している.小児科の協力により,円滑な病児保育の環境を整備した.登録児は平成18年度には72名,平成19年度には105名である.利用者は平成18年2月が最多であり,年間利用者数は平成18年度には197名,平成19年度には301名であった.疾患は上気道感染症が多かった.「研究支援」としては,勤務形態の多様性を大学に導入することを目指して,平成18年度,平成19年度はワークシェアにての研究者が2名,フレックス制の研究者が3名,研究費の支給を受けて研究を実施した.支援を受けている女性医学研究者は1カ月に1回,研究発表会を行っている.本事業の支援を受けた研究者からの評価では,子育てと研究の両立,研究の進捗において評価が高かった.子育てによって仕事を中断することなく,柔軟な勤務体制の中で研究を継続できたこと,診療科の壁を越えた同じ悩みを抱える仲間と出会えたことが,大きな励みと刺激になるという感想があった.先輩医師や心理職によって構成される「サポート委員」が子育て中の女性医学研究者の相談に乗り,カウンセリングを受けられるように整備した.子育てと研究の実施が可能な体制を構築し,子育て中の女性医師に研究の推進,学会発表,論文発表の機会を与え,育児との両立によって研究の遂行を可能とするシステムの構築を目指している.本課題終了後も本システムを継続し,本学における女性医師の支援体制をさらに発展させ,指導的立場となる有能な人材が様々な事情でキャリア形成を中断することがないような体制を構築していくことが必要である.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会誌, 45(2)
114-114, 2008
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