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第115回学術集会(平成20年6月15日(日))
【一般演題】
奨励賞候補演題II 我が国におけるHPV感染とタイプ別子宮頸部発癌リスク―スクリーニングとワクチンのための基礎データ―
小貫 麻美子1), 松本 光司1), 佐藤 豊実1), 沖 明典1), 南 里恵1), 岡田 智志1), 越智 寛幸3), 中尾 砂理1), 染谷 勝巳2), 山田 直樹3), 濱田 洋実1), 吉川 裕之1)
筑波大学産婦人科1), 茨城西南医療センター病院産婦人科2), 水戸済生会総合病院産婦人科3)
[目的]我が国におけるHPV感染率とタイプ別の子宮頸部発癌リスクを調べること.[方法]1999-2007年に筑波大学附属病院と茨城西南医療センター病院にてHPV DNA検査(L1コンセンサス・プライマーによるPCR法)を行った2282例(細胞診正常1517例,CIN1 318例,CIN2-3 307例,浸潤癌140例)のデータを解析した.本研究は各施設の倫理委員会の承認を得て行われ,全例からインフォームド・コンセントを得た.[成績]HPV DNA検出率は細胞診正常23%,CIN1 88%,CIN2-3 95%,浸潤癌94%であった.細胞診正常者での年齢別HPV陽性率は15-19歳36%,20-29歳29%,30-39歳22%,40-49歳12%,50-78歳13%であった.浸潤癌からの検出頻度は16型(38%),18型(23%),52型(8%),33型(3%),58型(3%)の順で高かった.現行のHPVワクチンが感染を予防できる16/18型の陽性率は浸潤癌全体では61%にとどまったが,腺癌(85%)や若年性頸癌(78%)では高率であった.また,細胞診正常者とCIN2-3/浸潤癌患者におけるHPV型分布を比較することによって算出されるタイプ別の相対危険度は,16/18/31/33/35/52/58型の7タイプ(4.36,95%CI 3.21-5.93)が他のoncogenic type(0.24,95%CI 0.16-0.37)やnon-oncogenic type(0.17,95%CI 0.09-0.30)に比べて格段に高かった.[結論]日本ではHPV16/18/31/33/35/52/58型の7タイプがとくにハイリスクと考えられた.子宮頚癌のなかでHPV16/18型が占める割合が我が国(60%)では欧米(70-80%)よりも低い点で現行のHPVワクチンには課題が残るが,細胞診によるスクリーニングにて早期発見が難しい腺癌や進展の早い若年性頸癌の予防に役立つ可能性がある.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会誌, 45(2)
130-130, 2008
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