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第115回学術集会(平成20年6月15日(日))
【一般演題】
奨励賞候補演題II 水腫化を伴わない絨毛に対してSTR解析でandrogenesisが証明された一例
鈴木 元晴, 難波 聡, 木村 真智子, 梶原 健, 岡垣 竜吾, 板倉 敦夫, 石原 理
埼玉医科大学産婦人科
現在の胞状奇胎の診断は,採取した子宮内容物の肉眼的所見により行われ,病理組織学的検査所見がそこに追加される形であった.しかし,これは肉眼的に胞状奇胎が否定された場合,続発しうる絨毛性疾患の発見が遅れる可能性を示唆する.今回,我々は胞状奇胎の術前診断のもと,採取した子宮内容物に肉眼的水腫様絨毛を認めなかった症例に対して,STR解析を行い全胞状奇胎と同様のandrogenesisを証明した一例を経験したので報告する.【症例】23歳0回経妊0回経産.近医で妊娠の診断を受けたが経膣超音波検査で胞状奇胎が疑われ,最終月経から妊娠8週4日の時点で当科紹介受診となった.超音波検査で小嚢胞状パターンを認め,血中hCGが69267mIU/mlと高値であったため,胞状奇胎と診断.妊娠8週5日に子宮内容除去術を施行した.しかし,採取した子宮内容物に肉眼的水腫様絨毛を認めなかった.また病理組織検査においても明らかな絨毛の腫大を認めなかったが,流産絨毛では認められないcistern様構造を認めたため,明らかな流産症例とは診断出来なかった.そこで採取した絨毛から抽出したDNAを用いてSTR解析を行ったところ,2精子由来のandrogenesis(ヘテロ奇胎)を確認した.現在,胞状奇胎に準じた管理で外来経過観察中である.【結語】従来の方法によって胞状奇胎と診断できない症例に対してSTR解析を行うことは,続発する絨毛性疾患をもれなく発見するために有用と思われる.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会誌, 45(2)
132-132, 2008
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