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第115回学術集会(平成20年6月15日(日))

【一般演題】
妊娠・分娩・産褥I
塩酸リトドリン投与中に発症した糖尿病性ケトアシドーシス合併妊娠の一例


元木 葉子1), 奥田 美加1), 榎本 紀美子1), 八木 瑞穂1), 長野 研二1), 鈴木 靖子1), 佐藤 綾1), 田野島 美城1), 三原 卓志1), 小川 幸1), 高橋 恒男1), 平原 史樹2)
公立大学法人横浜市立大学附属市民総合医療センター総合周産期母子医療センター1), 横浜市立大学産婦人科2)


 糖尿病性ケトアシドーシス(以下DKA)は,妊娠糖尿病の約1%に見られるが,母児共に予後不良となりうる重篤な疾患である.今回我々は塩酸リトドリン投与中にDKAを発症した症例を経験したので報告する.症例)33歳,3回経妊2回経産.第二子を4750gで経腟分娩した.今回妊娠中,健診受診は不定期で,妊娠23週時尿糖陽性も,耐糖能検査は受けなかった.妊娠33週1日,嘔気,嘔吐,腹痛を訴え前医受診.高血圧と蛋白尿を認め,妊娠高血圧腎症の診断で入院した.腹痛は切迫早産の診断で塩酸リトドリンを点滴投与された.翌妊娠33週2日,当センターへ母体搬送されたが,当院到着時経腹エコーで児の高度徐脈を認め,NRFSの診断で直ちに緊急帝王切開術を施行した.手術中,母体血液ガス分析ではpH7.05と高度の代謝性アシドーシスであり,搬送時の血糖304mg/dl,尿ケトン4+であることが判明,DKAと診断された.母体は術後22時間ICU管理し,術後7日目,食事療法を指導し退院した.児は3216g,heavy-for-dates,男児,肥厚性心筋症を認め,母体糖尿病の存在を裏付けた.Apgar Scoreは1分後0点,5分後0点.UapH6.673,心肺蘇生により自己心拍再開したが,5時間後に死亡した.DKAは,妊娠糖尿病の合併症としては稀であるが,一旦発症すると急激な経過で母児の死亡を含む重篤な合併症を引き起こす.塩酸リトドリンが発症の契機となることがあり,耐糖能異常を有する妊婦へ投与する際には十分な注意が必要である.


日本産科婦人科学会関東連合地方部会会誌, 45(2) 161-161, 2008


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