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第115回学術集会(平成20年6月15日(日))
【一般演題】
妊娠・分娩・産褥I 妊娠中の高血圧・糖尿病を契機に診断されたCushing症候群の1例
古川 哲平, 大平 哲史, 長田 亮介, 芦田 敬, 金井 誠, 塩沢 丹里
信州大学産婦人科
妊娠中に高血圧を認める場合には妊娠高血圧症候群を第一に考えるが,稀に診断されていない基礎疾患による2次性の高血圧であることがある.今回,治療に抵抗する妊娠中の高血圧・糖尿病を契機に診断されたCushing症候群の1例を経験した.症例は36歳,3回経妊1回経産で,8年前の前回妊娠・分娩時から妊娠糖尿病と高血圧が指摘されていた.今回は妊娠10週の前医初診時より高血圧があり,降圧剤を多剤併用するも収縮期血圧180mmHgとコントロール不良であった.また空腹時血糖170mg/dl,HbA1c7.1%と高値でありインスリンが導入された.血圧および血糖コントロールに難渋したため,妊娠・分娩管理目的に妊娠28週1日に当科搬送となった.母体には満月様顔貌,中心性肥満,ざ瘡を認め,血中コルチゾール値は34.7μg/dlと高値で日内変動消失,ACTH値は感度以下であった.MRIにて左副腎上極に直径4cmの腫瘤を認め,副腎腺腫によるCushing症候群が強く疑われた.この時点で母体に持続性頭痛,高血圧の持続,肝機能障害,高度の血液濃縮傾向があり,妊娠継続は困難と判断して妊娠29週2日に緊急帝王切開術を施行した.児は1195gの男児でApgar Score6/9,NICU管理となったが日齢77に退院した.母体は帝王切開後49日目に左副腎摘除術が施行され,組織学的には副腎腺腫であり,術後に高血圧と糖尿病は改善した.妊娠中に高血圧を認める場合には妊娠高血圧症候群のみならず,2次性高血圧の可能性も念頭に置いて検査・診断をすすめる必要があると考えられた.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会誌, 45(2)
162-162, 2008
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