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第115回学術集会(平成20年6月15日(日))
【一般演題】
妊娠・分娩・産褥V,その他 婦人保護施設入所中の妊婦に関する現状と問題点
水主川 純, 山本 直子, 中西 美紗緒, 岡 朱美, 桝谷 法生, 定月 みゆき, 五味淵 秀人, 箕浦 茂樹
国立国際医療センター病院産婦人科
【目的】近年,未受診妊婦が社会的問題となり,それらの背景の一つに経済的問題がある.行政の判断や支援を受け,経済的・社会的理由で妊娠中に婦人保護施設に入所し,分娩に至る者がおり,当科ではそのような妊婦の健診や分娩を多く取り扱っている.婦人保護施設入所中の妊婦について検討した.【方法】2007年1月から2007年12月に当科で分娩した婦人保護施設入所中の妊婦22例について,患者背景や母児の周産期事象について検討した.【結果】母体年齢は18歳から37歳(平均27.7歳),初産婦11例,経産婦11例,外国籍2例であった.未入籍症例は21例(95.4%)で,11例(50%)は離婚歴を有し,19例(86.3%)は今回の妊娠相手と音信不通であった.既出産児を自ら養育している症例は3例のみであった.施設入所理由は経済的理由が18例(86.3%)と最も多く,その他DV被害や性的暴行被害であった.当科初診妊娠週数は8週から38週(平均30.1±6.9週)であり,双胎妊娠2例,既往帝王切開1例を含んだ.主な合併症は,クラミジア感染症6例,精神疾患5例,精神発達遅滞4例,C型肝炎キャリア3例であった.平均分娩週数は,39.2±2.2週(早産2例),分娩方法は経腟分娩20例(90%),帝王切開分娩2例(10%),児の平均出生体重は3063.0±647.1gであった.出生児のうち,早産児,低出生体重児,呼吸障害,黄疸などの理由で小児科入院を要する児は10例(41.6%)であり,5例(22.7%)は養育困難のため乳児院保護となった.【結論】婦人保護施設に入所する妊婦は様々な背景を抱え分娩に至り,産後も問題が山積する.支援を受け,いわゆる未受診妊婦という状況は回避できた可能性もあるが,この様な妊婦を検討し,産科診療や行政支援のあり方を更に考慮する必要があると考えられた.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会誌, 45(2)
166-166, 2008
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