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第115回学術集会(平成20年6月15日(日))
【一般演題】
妊娠と感染症 当院での正常新生児におけるMRSA感染の実態―予防と予後について―
宮田 あかね, 佐野 義洋, 岡村 恵子, 青木 陽子, 小野寺 潤子, 今川 信行, 大和 竜夫, 木村 英三
立正佼成会附属佼成病院産婦人科
MRSA(methicillin-resistant Staphylococcusaureus)は,早産の未熟新生児など免疫力が十分に備わっていない場合,敗血症・肺炎・髄膜炎など致死的な病気を引き起こす.そのためNICUにおけるMRSA感染対策は非常に重要とされている.一方,正常新生児(正期産・AFD児と考えられるもの)におけるMRSA感染に関しては,報告は少ないものの,多くの場合は無症状で経過・治癒していると言われている.正常新生児においてMRSA感染に対する感染予防および治療などの介入はどの程度必要か,MRSA感染/非感染の新生児における合併症など経過・予後に違いはあるか,などをレトロスペクティブに検討した.【方法】2000年1月から2004年4月にかけて当院で出生した約1300人の児全員(正常新生児が90%以上)に対し,鼻腔および臍ぬぐい液を用い,細菌培養と抗TSST-1抗体検出を施行した.また,MRSAが陽性であった場合,後日再培養を施行した.さらに当院で1ヶ月検診を受診した児に関し,生後1ヶ月後の健康状態や症状を調査した.また調査期間中に,感染対策として様々な手段を講じた.【結果】MRSA陽性児は平均で約18%.対策を講じた調査期間後半では,MRSA陽性児の数・比率は減少した.発熱・発疹など明らかな症状が現れた児は数名であった.他のMRSA陽性児は無症候で経過した.これら陽性児は1ヶ月検診でも特に症状はなく,MRSA陰性児と明らかな差はなかった.【考察】MRSAは通常の院内感染対策の方法に従うことで,菌の伝播をある程度防止することが可能であり,実際にMRSA感染症の発生を減少させることが可能である.またMRSA陽性児の1ヵ月後に臨床的な異常は認めず特別な加療は必要ないと思われた.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会誌, 45(2)
170-170, 2008
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