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第116回学術集会(平成20年11月29日(土),30日(日))
【シンポジウム】
新しい排卵誘発法 インスリン抵抗性改善薬によるPCOS女性に対する排卵誘発法
安藤 索
杏林大学医学部産科婦人科
インスリン抵抗性は,インスリンの感受性がインスリン標的細胞や臓器で低下した状態で,代償的にインスリンの分泌過剰が生じ,高インスリン血症を生じる.多嚢胞性卵巣症候群(polycystic ovary syndrome:PCOS)症例においてみられるインスリン抵抗性でも,高インスリン血症を生じ,その結果,卵巣莢膜細胞からのアンドロゲン分泌亢進を惹起する.インスリン抵抗性による高インスリン血症は,血中のIGF-I結合蛋白-1(IGFBP-1)産生を低下させ,血中IGF-Iの生物活性を増加させ,そのIGF-Iもまた卵巣からのアンドロゲン産生を増加させる.また肝臓においてもインスリンは性ホルモン結合グロブリンの産生を抑制するので,遊離アンドロゲンが増加する.これらの高アンドロゲン血症は卵巣における卵胞発育を妨げたり,卵胞閉鎖を引き起したりすると考えられている. インスリン抵抗性を有するPCOS症例では排卵誘発が困難なことが多く,その成因となっているインスリン抵抗性を改善させる薬剤による排卵誘発法が考え出され,その一つであるメトフォルミン療法が欧米を中心に普及している. メトフォルミンによる排卵誘発は,メトフォルミン単独投与でも有効であるが,クロミフェン療法無効症例に併用することでも効果があることが報告されている.これまでのところメトフォルミンはインスリン抵抗性を有するPCOS症例で,肥満やアンドロゲン軽度上昇例などに奏功すると考えられているが,その作用機構は完全には解明されていない.今回,インスリン抵抗性を有するPCOS症例で血中あるいは卵胞液中IGFBP-1をメトフォルミン投与前後で比較し,その動態と排卵誘発との関係を解析することにより,メトフォルミンの作用機構の解明を試みた.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会誌, 45(3)
212-212, 2008
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