|
<< 学会誌へ戻る
<< 前のページへ戻る
第116回学術集会(平成20年11月29日(土),30日(日))
【シンポジウム】
新しい排卵誘発法 リコンビナントFSHによる排卵誘発法
高見澤 聡
自治医科大学産科婦人科
遺伝子組換え卵胞刺激ホルモン;リコンビナントFSH(rFSH)は1985年以降に基礎研究・臨床試験が開始,1996年に市販され,欧米を中心に広く普及してきた.特に欧州では狂牛病発生による尿由来FSH・HMG製剤(uFSH・uHMG)の製造中止・供給停止のため,排卵誘発に用いるゴナドトロピン製剤としては第1選択となっており,現在,ART時の調節卵巣(過剰)刺激【controlled ovarian(hyper-)stimulation:COS(COH)】は,rFSH単独による誘発が主流となっている. rFSHの特徴は,99%以上とされる高純度から得られる高力価であり,当初は従来のuFSHおよびuHMGに対しARTでの有効性や臨床成績の向上が期待された.しかし最近の報告では,rFSHの優位性は認められておらず,むしろuFSH・uHMGの有効性が見直され,卵胞発育へのLHの役割が注目されている. 本邦では2005年にARTでのCOSに適応(保険外)が認められたが,rFSHの使用経験は未だ少なく投与プロトコールは確立されていない.従来から本邦のART時COSは,FSH単独ではなくLHを含むHMG製剤が広く使用されており,FSH製剤から開始し途中FSH/LH製剤に切り換えての誘発が多い.そこで当院での同一の反復ART症例を対象として,従来のuFSHに替えてrFSHを使用するCOSプロトコールを作成し,rFSHがuFSHと比較してART qualityを高めるかを検討した. long法23症例(uFSH40周期,rFSH32周期)の検討では,FSH使用量,総HMG使用量,採卵数,MII卵数,HMG/採卵数,受精率,分割率,良好胚率,妊娠率などいずれのART結果に差はみられなかった.さらにGnRHアンタゴニスト法9症例(uFSH11周期,rFSH11周期)の検討においても差はなかった.rFSHはuFSHに対して明らかな優位性はみられないもののART結果は同等であり非劣性を示した.よって,今後ART時COSにおいてuFSHからrFSHへの移行は容易に行い得ると考える. 一方,一般不妊治療でのrFSH使用は,2007年に保険適応が認められた.経口排卵誘発剤への反応不良例や内膜菲薄例13症例に使用し7例の妊娠例があり,良好な印象を得ている.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会誌, 45(3)
213-213, 2008
|