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第116回学術集会(平成20年11月29日(土),30日(日))
【パネルディスカッション】
周産期医療の新たな構築を目指して 総合周産期母子医療センターにおけるセミオープンシステムの意義
大島 教子1), 稲葉 憲之1), 多田 和美2), 庄田 亜紀子2), 渡辺 博2)
獨協医科大学産科婦人科1) 獨協医科大学病院総合周産期母子医療センター2)
我々の施設では2005年よりローリスク妊婦を対象にセミオープンシステムでの分娩取扱いが始まり,3年以上が経過した.セミオープンシステムでの分娩とは,通常の妊婦健診は妊婦の居住する地域の診療所で行い,出産は連携病院で行う妊娠・分娩管理体制であり,2005年より厚生労働省により全国7都県でモデル事業が展開されている.周産期医療施設を地域にオープン化するこのシステムは,産科医療の安全性向上を目的として厚生労働省よりその推進が提言されたが,昨今急速に進んでしまった日本における周産期医療崩壊により,各地でこの体制の確立,拡充が急務になってきている.今回,当施設におけるセミオープンシステム導入後の分娩の現状をまとめ,今後の課題を検討したので報告する. 当施設では,2005年1月から2008年3月までに135件のセミオープンでの分娩を取り扱った.セミオープン分娩数は初年度18件,2年目は41件,3年目は61件と年々増加傾向にあり,年間分娩数における比率もそれぞれ2.1%(18/874),4.4%(41/933),6.3%(61/970)と増加してきている.初産婦は88名(65.2%),1回経産婦は37名(27.4%),2回以上経産婦は10名(7.4%)と初産婦が6割以上を占めた.分娩様式は118名(87.4%)が経腟分娩,17名(12.6%)が帝王切開だった.36週未満の早産は3例(2.2%)であった.妊娠経過中に異常が出現し,妊娠管理を当科で行う事になった症例は3例で,切迫早産1例,胎児胸水貯留1例,IUGR 1例であった.また産褥1ヶ月健診は,母子共に連携施設に戻り行っているがこれまで問題は生じていない. 当施設においてセミオープンシステム導入後,その取り扱い分娩数は増加傾向にあるが,現在まで大きな問題や混乱は生じていない.しかし今後更に取り扱い数が増加し続ける事も予想されており,地域全体の周産期医療体制の抜本的な見直しを含めた,効率的かつより安全性の高い医療を提供するシステム作りを確立する事が必要と考えられる.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会誌, 45(3)
216-216, 2008
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