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第116回学術集会(平成20年11月29日(土),30日(日))

【スポンサード教育シンポジウム】
子宮頸癌は予防できる―ワクチンと検診の精度管理―
ベセスダシステム2001準拠子宮頸部細胞診報告様式導入の意義と運用の実際


平井 康夫1,2)
癌研有明病院レディースセンター婦人科1)
同細胞診断部2)


 現在,日本で使用されている細胞診判定の報告様式は,パパニコロウ分類を一部改変した日母(日本産婦人科医会)細胞診クラス分類である.日母分類では,細胞診結果をクラスIからVの5段階に分けて評価,報告してきた.この分類には異型や悪性所見の定義はなく,細胞所見の分類ではなく,判断基準を示したものであった.日母がん対策委員会はパパニコロウ分類に細胞病理学的所見やそれに基づいた臨床的判断を盛り込んだ細胞診クラス分類を作成し(1973年),研修ノート「子宮がん検診」に公表(1978年)した.その後,この分類は1983年「老人保健法による保健事業の実施について」の厚生省通知において,「細胞診の結果は細胞診クラス分類によって分類する」と記載され,広く検診の現場で使われてきた.この「日母分類」は細胞診の判定だけでなく,臨床的判断基準を示したことが特長であった.また数値化しにくい形態学にあえてクラスI,II・・・という数値をとり入れ,判定としたため,使い勝手がよく,本邦で広く受け入れられてきた.
 一方,海外ではほとんどの地域で1988年にアメリカで作成されたベセスダシステムに基づいた,子宮頸部細胞診報告様式が現在用いられ,クラス分類は既に公的には使用されてはいない.ベセスダシステムは2001年の大幅改定を経て,より実用的に進化した.その要点は細胞診の周辺領域における新規技術の発展を取り入れ,特に「子宮頸部病変におけるHPVの関わり」をエビデンスとして考慮したことにある.クラス分類を廃止する理由は,細胞病理医の診断内容を受け手に正確に伝えるためであった.ベセスダシステムはアメリカ政府の主導の基に全米で使用され,現在は世界的にも認知されている.日本でも臨床細胞学会を中心に,多くの細胞診専門医,細胞検査士の賛同を得ている.ベセスダシステムは元来,子宮頸部の細胞診の報告様式であるが,その内容は細胞診の全領域に多くの影響を及ぼし,最近改訂された日本の乳腺および甲状腺の細胞診報告様式にも反映された.
 元々日母分類を提唱した日本産婦人科医会は最近,日母分類を改訂し,新しい分類“ベセスダシステム2001準拠子宮頸部細胞診報告様式(通称ベセスダシステム)”の採用を正式に決めた.本講演では,ベセスダシステム2001に準拠した子宮頸部細胞診報告様式導入の意義と運用の実際を,癌研病院におけるベセスダシステム報告の経験から解説する.


日本産科婦人科学会関東連合地方部会会誌, 45(3) 223-223, 2008


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