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第116回学術集会(平成20年11月29日(土),30日(日))
【スポンサード教育シンポジウム】
子宮頸癌は予防できる―ワクチンと検診の精度管理― 子宮頸がん検診におけるHPV検査の有用性と位置づけ
今野 良
自治医科大学附属さいたま医療センター産婦人科
子宮頸癌の99%が高リスクHPV感染を原因としていることを踏まえ,高精度の子宮頸がん検診の実施とHPVワクチンの接種により,子宮頸がん撲滅が可能な時代が到来した.多くのHPV感染は一過性であるが持続感染した一部の症例が癌へ進行する.分子生物学的なエビデンスが明らかになった現在,頸癌の自然史を理解した検診方法とその実施が望まれる.細胞診を用いる頸がん検診は,海外でも日本でも子宮頸癌の発生と死亡率を減少させた十分な根拠があると評価されているが,WHO(IARC)は2004年に「HPV検査が一次スクリーニングとして,子宮頸癌の発生と死亡率の減少に有効である十分な根拠がある」との声明を発表した.HPV検査単独では感度が細胞診より10−30%高く,特異度は細胞診より約10%低い.細胞診との併用で感度はほぼ100%に高まる.2005年米国産婦人科学会は,30歳以上において細胞診とHPV検査を併用した場合に,中等度異形成以上の子宮頸部高度病変および頸癌を見逃す感度は1/1000以下であるとする新しいガイドラインを発表した.そこで,私たちも子宮頸がん検診におけるHPV検査と細胞診併用の精度評価を多施設研究によって行なった.その結果,中等度異形成以上の病変を検出した感度,特異度,陽性的中度,陰性的中度は(すべて%),(1)細胞診,(2)HPVテストおよび(3)両者併用の各々で,(1)86.0,93.6,19.1,99.7,(2)94.0,91.5,16.1,99.9,(3)100,89.7,14.4,100であった.わが国においてもHPV検査の検診への導入は病変検出と精度管理向上に寄与することが示された.また,2007年米国コルポスコピー子宮頸部病理学会は新しい子宮頸部病変のガイドラインを発表し,ASC-USに対するトリアージとしてHPV検査を行なうことを推奨している.これらの背景をもとに,精度が高く医療経済を考慮した費用対効果のよい検診実施ならびに適切な前癌病変管理について述べる.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会誌, 45(3)
224-224, 2008
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