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第116回学術集会(平成20年11月29日(土),30日(日))
【奨励賞候補演題1】
奨励賞候補演題1 大量出血が予想された前置胎盤症例に対するIABO(Intra-aortic balloon occlusion)の使用経験
尾崎 江都子, 鶴岡 信栄, 田中 宏一, 尾本 暁子, 長田 久夫, 生水 真紀夫
千葉大学医学部附属病院周産期母性科
【はじめに】Intra-aortic balloon occlusion(IABO)は,外傷による大量出血の際に大動脈内に留置したカテーテルを用いて緊急止血を行うもので,救急医療分野で用いられている一時的止血法である.今回,前置癒着胎盤などで大量出血が予想される帝王切開術に本法を用い,出血のコントロールを試みたので報告する.【対象】対象は,帝王切開時に大量出血が予想された5症例である.【結果】症例1は前置癒着胎盤症例(妊娠37週),症例2は巨大子宮頚部筋腫を合併した前置胎盤症例(妊娠36週),症例3は前壁付着前置胎盤症例(妊娠35週),症例4は前置癒着胎盤(妊娠35週)である.症例1,3は帝王切開の既往があった症例である.症例4では,術中に大動脈バルーンが虚脱したためにIABOによる止血が得られなかった.その他の症例では,児娩出後に必要に応じて20分程度のIABOを1ないし2回併用して手術を施行した.症例1,4では子宮全摘術が行われたが,その他の症例では子宮が温存された.帝王切開術時の出血量は,それぞれ2603g,1872g,1410g,7160gであった.症例1,2,3では,自己血輸血のみで対応が可能で,同種輸血は行われなかった.IABO導入前の当科における帝王切開時出血量は,癒着のない前置胎盤症例(48例)で1977g(418-4189g),前置癒着胎盤(8例)6337g(1975-13882g)であった.【考察】IABOにより一時止血の可能であった症例では,手術中の出血量を減少させることが可能と考えられた.IABOには,血栓形成やカテーテルトラブル,コンパートメント症候群など特有の合併症がある.今後さらに症例を重ねて安全性と有効性の確認を行う必要がある.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会誌, 45(3)
228-228, 2008
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