|
<< 学会誌へ戻る
<< 前のページへ戻る
第116回学術集会(平成20年11月29日(土),30日(日))
【一般演題】
合併症妊娠1 妊娠中に診断された筋緊張性ジストロフィーの2症例
大原 健, 高木 健次郎, 松村 英祥, 村山 敬彦, 斉藤 正博, 馬場 一憲, 関 博之
埼玉医科大学総合医療センター総合周産期母子医療センター産科
筋緊張性ジストロフィー(myotonic dystrophy:MD)は進行性の筋萎縮と筋力低下を主訴とする常染色体優性の遺伝性疾患である.今回,妊娠を契機に診断された経過の異なるMDの2症例を経験したので報告する.症例1:40歳0回経妊0回経産.顕微授精にて妊娠.妊娠29週に急激な羊水過多を認めた.超音波上,胎児は四肢が伸展し胎動が乏しい印象であり,母体の咬筋の萎縮を認めた.神経学的にはmyotoniaを認め,問診と合わせMDの診断となった.妊娠36週に自然陣発したが,NRFSの診断で緊急帝王切開となった.児は2154gの女児でApgar scoreは1分後1点,5分後5点で挿管後NICUに入院となった.児末梢血液のサザンブロット法で約1,600回のCTGリピートの延長を認め,先天性筋緊張性ジストロフィーと診断された.症例2:30歳1回経妊0回経産.実母がMDと診断されている.顕微授精にて妊娠.妊娠14週に妊娠糖尿病疑いで,当院に受診し,インスリン導入.妊娠28週に四肢の筋肉痛を認め,血液生化学検査上CPK 3295IU/lと高値,神経学的にはmyotonia認め,家族歴・問診からMDの診断となった.以後,CPKや筋肉痛の明らかな改善はなかった.妊娠35週に前期破水,頚管熟化が不良であり,帝王切開で児娩出となった.児は1824gの男児でApgar scoreは1分後8点,5分後9点でNICUに入院となった.分娩後は筋肉痛の著名な改善を認め,CPK 253IU/lと下降を示した.今回,我々は経過の異なるMD合併妊娠の2症例を経験した.MDは羊水過多や母体の筋症状の悪化が契機となり妊娠中に診断となることが多く,早期診断をして,母体の内科合併症・産科合併症・児の罹患・遺伝子診断に対するカウンセリングなど多科にわたる対応が必要とされる.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会誌, 45(3)
248-248, 2008
|