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第116回学術集会(平成20年11月29日(土),30日(日))
【一般演題】
合併症妊娠2 von Hippel-Lindau病が疑われ,胎児腎嚢胞を認めた網膜血管腫合併妊娠の一例
林 昌子, 中井 晶子, 阿部 崇, 奥田 直貴, 川端 伊久乃, 高橋 肇, 大屋 敦子, 中井 章人
日本医科大学産婦人科
von Hippel-Lindau病(VHL病)は,網膜・中枢神経系の血管腫や淡明型細胞腎細胞癌など,数種類の臓器に嚢胞性または血管性の腫瘍が発生する常染色体優性遺伝の疾患で,本邦では患者は数百人といわれる稀な疾患である.我々は,母体のvon Hippel-Lindau病が疑われ,胎児にも腎嚢胞を認めた症例を経験したので報告する.症例は25歳0経妊0経産.家族歴に母の腎嚢胞がある.既往歴として,24歳時に眼科にて左目傍視神経乳頭網膜毛細血管腫を指摘されVHL病が疑われた.しかし本人が染色体検査を希望せず,本人・家族ともにVHL病の確定診断には至っていない.今回,他院で妊婦健診中,妊娠33週時に超音波検査にて胎児の腹腔内に嚢胞様の像が認められたため,消化管閉塞疑いで当科紹介となった.入院精査の結果,胎児の左側腎嚢胞が強く疑われたが,胎児尿量は保たれており経過観察とした.妊娠37週2日,分娩時の母体傍視神経乳頭網膜毛細血管腫の出血リスクを軽減する目的で選択的腹式帝王切開術を施行した.児は2,886gの男児,Apgar score 1分後8点/5分後9点であった.胎児左腎には多発性嚢胞を認め,実質は菲薄化し,無機能腎と考えられた.対側の腎臓は正常で腎機能に異常は認められなかった.術後8日目に母児ともに経過良好にて退院に至ったが,今後,新生児については他の腫瘍性病変の有無について精査予定である.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会誌, 45(3)
249-249, 2008
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