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第116回学術集会(平成20年11月29日(土),30日(日))
【一般演題】
合併症妊娠2 妊娠後期に増悪を認めた尿崩症合併妊娠の1例
清水 薫, 篠原 裕子, 石橋 智子, 鳥羽 三佳代, 宮坂 尚幸, 久保田 俊郎
東京医科歯科大学産婦人科
尿崩症は希な妊娠合併症である.今回妊娠後期に発症・増悪を認めた尿崩症の1例を経験したので若干の考察を加えて報告する. 症例は28歳0経妊0経産,既往歴・家族歴に特記事項なし.妊娠10週,悪阻終了後より飲水量増加(8〜10L/日)がみられた.妊娠32週時に家族より多飲・多尿を指摘され,75gOGTTで90-183-222mg/dlと妊娠糖尿病も認められたため,管理入院となった. 入院時は飲水9〜11L/day,尿量7〜10L/day,血漿浸透圧279mOsm/L,尿浸透圧67mOsm/L,ADH 0.15pg/mlを示した.頭部MRIではT1強調画像にて下垂体後葉の高信号は保たれていた.デスモプレシン(DDAVP)負荷試験を行い,尿浸透圧は59mOsm/Lから252mOsm/Lへと改善し,飲水量・尿量ともに5〜6Lと減少が見られたため中枢性尿崩症と診断し,DDAVP点鼻10μg/dayを開始した.妊娠糖尿病は1600Kcal/dayの食事療法のみで血糖コントロール良好であった.DDAVP 7.5μg/day点鼻により尿量は3L台に著減し,飲水量も2〜3Lと正常となったため退院した.妊娠38週6日で陣痛発来し正常経腟分娩に至った.分娩後DDAVP点鼻を中止したところ尿量7L/dayへ再度増加したため,5μg/day点鼻のみ継続とした.産後1ヵ月より2.5μg/dayに減量し,産後2ヶ月には飲水量は3L/dayに減少,尿浸透圧301mOsm/Lと正常値に回復したため,DDAVP点鼻を中止した.妊娠後期に発症した尿崩症の1例であり,潜在性尿崩症が妊娠を契機に顕在化した可能性が考えられた.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会誌, 45(3)
250-250, 2008
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