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第116回学術集会(平成20年11月29日(土),30日(日))

【一般演題】
合併症妊娠5
産褥4日目に右季肋部痛にて発症し腹腔鏡下に診断し得た卵巣嚢腫破裂の1例


幸本 康雄1), 御子柴 尚郎1), 植木 亮太郎1), 新城 梓2), 安水 渚3), 岡崎 志帆1)
社会保険蒲田総合病院産婦人科1), 昭和大学藤が丘病院産婦人科2), 昭和大学産婦人科3)


 卵巣嚢腫合併妊娠では分娩時に児頭の圧迫により嚢腫の破裂を起こす危険が増すため,分娩の取り扱いと産褥期の管理において慎重な対応が必要である.今回我々は卵巣嚢腫合併妊娠で,産褥4日目に右季肋部痛を発症し,腹腔鏡にて診断し得た卵巣嚢腫破裂の1例を経験した.症例は29歳,0経妊.妊娠8週で初診,超音波検査にて約8cmの皮様嚢腫と思われる右卵巣嚢腫を認めた.妊娠後期の内診所見より経腟分娩可能と判断し,計画分娩の方針とした.分娩直前の嚢腫の大きさは約9cmであった.39週1日,分娩誘発を開始し同日正常分娩に至った.分娩経過中に卵巣嚢腫の破裂を疑う症状は認めず,分娩直後の嚢腫の大きさも分娩前と変化はなかった.分娩後は異常なく経過していたが,産褥4日目より突然右季肋部痛が出現し,高度の炎症反応を認めた.内診上は下腹部に圧痛等は全く認めず,超音波検査では卵巣嚢腫は子宮の右側方に大きく移動し,ダグラス窩に極少量の腹水を認めた.臨床症状より胆石などを疑い腹部CTを施行したがそれらを疑う所見は認めず,卵巣嚢腫は分娩前より若干縮小していて,嚢腫の周辺およびダグラス窩に少量の腹水の貯留を認めた.卵巣嚢腫の破裂を疑い,産褥6日目に診断および嚢腫摘出を目的として腹腔鏡下手術を行った.手術所見では子宮,右卵巣周囲から肝周囲までの広範囲に皮様嚢腫の内容液の貯留を認め,右季肋部付近に大網の癒着を認めた.嚢腫には約7mm程度の破裂口が認められた.嚢腫摘出を行い,腹腔内を十分に洗浄して手術を終了し,術後7日目に退院した.本症例のように骨盤腔内に典型的な症状を認めない卵巣嚢腫破裂症例に対して,腹腔鏡は診断および治療に有用であると考えられた.


日本産科婦人科学会関東連合地方部会会誌, 45(3) 266-266, 2008


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