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第116回学術集会(平成20年11月29日(土),30日(日))
【一般演題】
ART 反復する卵巣子宮内膜症性嚢胞の感染に対して保存的治療の後,凍結融解胚移植により妊娠しえた一例
野路 千智, 後藤 優美子, 中村 絵里, 東郷 敦子, 貴家 剛, 鈴木 隆弘, 石本 人士, 三上 幹男, 和泉 俊一郎
東海大学医学部専門診療学系産婦人科
不妊症患者の約50%は子宮内膜症と診断され,卵巣子宮内膜症性嚢胞を有する重症例も多い.卵巣子宮内膜症嚢胞に感染を引き起こすと,進展し骨盤腹膜炎となる場合がある.治療は,抗菌剤が効かない場合には切開排膿,ドレナージ,手術的除去であるが,妊孕性への配慮が求められる.今回,子宮内膜症性嚢胞に感染を繰り返したが保存的に治療し,2年後に体外受精-凍結融解胚移植により妊娠しえた症例を経験した.症例は37歳,1経妊0経産.30歳時に挙児希望にて当科初診.腹腔鏡により両側卵巣子宮内膜症性嚢胞,r-ASRM分類で4期と診断された.以後,経腟超音波ガイド下にて再発卵巣子宮内膜症性嚢胞の穿刺吸引を4回繰り返し,並行して人工授精,体外受精を施行した.35歳時,クロミフェン周期による人工授精を施行した2日後より38度台の発熱を認め骨盤腹膜炎と診断,抗菌剤の点滴加療後に経腟超音波ガイド下嚢胞(膿瘍)吸引術を施行した.その後も軽快再燃を繰り返したため,術後2ヶ月で腹腔鏡手術にいたった.手術は腹腔鏡下癒着剥離術,左卵管部分切除術,右卵管切開術,両側卵巣部分切除術,および多発する卵巣内膿瘍に対し経腟超音波ガイド下穿刺吸引術を施行した.癒着が高度であったため腹腔鏡と経腟エコーガイド下手術を併用することにより卵巣機能の温存をはかった.術後の再発はなく,卵巣刺激により10個の卵を獲得でき,卵巣機能の温存が示唆された.その後の凍結融解胚移植により継続妊娠が成立した.挙児希望例においては,嚢胞の感染を繰り返しても妊孕性を重視した保存的治療を選択することが重要と考えられた.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会誌, 45(3)
271-271, 2008
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