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<< 学会誌へ戻る 悪性転化を伴う成熟嚢胞性奇形腫の頻度は約1〜3％と報告されている．その多くは扁平上皮癌で，腺癌の頻度は極めて稀である．今回我々は成熟嚢胞性奇形腫に腸型腺癌への悪性転化を認めた症例を経験したので報告する．症例は37歳女性，0経妊0経産．疼痛を伴う腹部腫瘤を主訴に近医を受診し，卵巣腫瘍が疑われ当院へ紹介受診となった．腹部に小児頭大の腫瘤を認め，MRIにて下腹部に一部脂肪成分と石灰化成分を伴った不整な充実部を伴う右多房性嚢胞性腫瘤を認め，悪性転化を伴う成熟嚢胞性奇形腫や胚細胞腫瘍が疑われた．妊孕性温存を強く希望されたため，右側付属器摘出術を施行した．開腹所見は多量の血性腹水と周囲臓器と癒着した成人頭大の右卵巣腫瘍を認めた．右卵巣割面は壊死を伴う黄白色の充実部が認められ，嚢胞内には多量の脂肪成分が含まれ，一部には毛髪成分も認められた．病理組織学的には異型円柱上皮が間質増生を伴って，異型腺管，篩状構造を形成して浸潤増殖する腺癌領域と成熟嚢胞性奇形腫の混在を認めた．腺癌部分は形態学的に結腸，直腸由来腺癌の像と酷似し，免疫組織化学的染色ではCK7陰性，CK20陽性，vimentin陰性と卵巣粘液性腺癌は否定的であり，成熟嚢胞性奇形腫の腸型腺癌への悪性転化もしくは転移性消化管癌が考えられた．術前精査より消化器系癌は認められず，最終的に腸型腺癌への悪性転化を伴う成熟嚢胞性奇形腫と診断した．術後はBEP療法を行う予定である．今回我々は腸型腺癌への悪性転化を伴う成熟嚢胞奇形腫と診断した稀な一症例を経験した．悪性転化を伴う卵巣成熟嚢胞性奇形腫につき若干の文献的考察を加えて報告する． 日本産科婦人科学会関東連合地方部会会誌, 45(3) 281-281, 2008 |
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