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第116回学術集会(平成20年11月29日(土),30日(日))
【一般演題】
悪性腫瘍2 漿液性境界悪性卵管腫瘍の一例
野口 里枝, 松本 光司, 志村 玲奈, 安倍 梓, 岡田 智志, 水口 剛雄, 佐藤 豊美, 沖 明典, 吉川 裕之
筑波大学臨床医学系産婦人科
今回,われわれは非常に稀な卵管原発の漿液性境界悪性腫瘍(SBT;serous borderline tumor)を経験したので報告する.【症例】37歳2回経妊2回経産.腹部腫瘤を自覚し受診.右付属器領域に壁在結節のある13cm大の嚢胞性腫瘍を認め,境界悪性以上の卵巣腫瘍が疑われた.腫瘍マーカーはCA125のみ若干高値(50.9U/ml)であった.当初妊孕性温存を希望したため診断確定を目的として右付属器摘出術+大網生検+左卵巣生検を行った.術中所見では右卵管が13cm大に拡張し,隣接する正常な右卵巣を認めた.嚢胞内腔面は乳頭状の多数の壁在結節を認めた.病理検査では卵管原発のSBTとの診断であった.病理診断の結果を説明したところ卵巣境界悪性腫瘍に準じた治療を希望されたため,再手術にて腹式単純子宮全摘出術+左付属器切除術摘出術+右骨盤リンパ節生検+大網部分切除術を施行した.病理検査では転移を認めずIa期(pT1aN0M0)の診断であったため,後療法なしで経過観察としている.卵管原発のSBTは非常に稀で確立した治療方針はない.報告例は海外を含めてこれまで7例のみである.これらの報告によると20代〜30代が多く,腹痛や腹部膨満などの症状で発見されることもあるが偶然発見されることのほうが多い.治療方法は卵管切除のみが大半で本症例のように卵巣の境界悪性腫瘍に準じた治療を行っている症例はみられなかった.報告例では予後良好であったが,フォローアップ期間も短く(中央値2.4年,最長6年)報告数も少ないため,さらに長期的な予後についてはわかっていない.今後慎重なフォローアップが必要と考えている.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会誌, 45(3)
287-287, 2008
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