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第116回学術集会(平成20年11月29日(土),30日(日))

【一般演題】
良性腫瘍
診断に苦慮した嚢胞性子宮腺筋症の1例


板谷 雪子, 高井 泰, 市川 美和, 斎藤 正博, 林 直樹, 高木 健次郎, 馬場 一憲, 関 博之
埼玉医科大学総合医療センター産婦人科


 〔緒言〕嚢胞性子宮腺筋症は稀な疾患で,子宮内膜症性嚢胞が子宮筋層内に形成される子宮腺筋症の特殊な形と考えられている.今回,術前診断に苦慮し,自然破裂を起こした嚢胞性子宮腺筋症の1例を経験したので報告する.〔症例〕44歳3回経妊2回経産.下腹痛を主訴に2007年6月11日前医受診.初診時に左付属器に10×6cm大の腫瘤を認め左卵巣腫瘍と診断された.その後痛みは消失したが,腫瘤の縮小は認められず,CA125:259U/mlと高値であり,悪性腫瘍の可能性も考慮され,当院紹介受診となった.6月20日,初診時の内診所見で正常大子宮の左前方に鵞卵大の腫瘤が触知され,超音波検査上でも左卵巣腫瘍が最も疑われた.CT・MRIでは左卵巣嚢胞性腫瘤(子宮内膜症性嚢胞疑い)と診断されたが,後日の超音波検査では子宮との連続を確認し変性子宮筋腫と診断し腹腔鏡下筋腫核出術を予定していた.10月18日,突然の腹痛が出現し緊急入院となった.同日,急性腹症の診断で緊急手術を施行した.術中所見は子宮底部より連続した腫瘤があり,その表面が一部破裂し腹腔内に粘調なチョコレート様の内容物が流出していた.以上より嚢胞性子宮腺筋症の破裂と診断し,単純子宮全摘を施行した.また虫垂が腫瘤と強固に癒着していたため虫垂切除も施行した.病理診断の結果でも嚢胞性子宮腺筋症と診断された.術後経過は問題なく術後8日目に退院した.〔考察〕子宮腫瘍のうち,嚢胞性子宮腺筋症は0.35%と稀な疾患で,その発生機序については不明な点も多い.本邦での報告例は20例程度であり,術前診断が困難との報告が多い.今回我々は術前診断に苦慮した嚢胞性子宮腺筋症を経験したので報告する.


日本産科婦人科学会関東連合地方部会会誌, 45(3) 292-292, 2008


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