|
<< 学会誌へ戻る
<< 前のページへ戻る
第116回学術集会(平成20年11月29日(土),30日(日))
【一般演題】
臍帯,静脈血栓 妊娠中に発症したDVT症例の検討
小松 浩司郎, 定方 久延, 篠崎 博光, 勝俣 祐介, 笠原 慶充, 増田 由起子, 清水 和子, 川田 亜公子, 田口 千香, 水谷 亜紀子, 矢崎 聡, 峯岸 敬
群馬大学産婦人科
先天性素因がなくても妊娠・産褥期は長期臥床,多血・脱水など,通常よりも血栓を生じやすい状態にあることが知られている.産科領域における深部静脈血栓症(DVT)及び肺血栓塞栓症(PTE)の発症数は年々増加しており2004年にその予防ガイドラインが考案された.しかし妊娠・産褥期におけるDVT,PTEに関する治療基準などについては未だ明確に定まっていないのが現状であり,その発症を予防することが重要である. 今回我々は妊娠中にDVTを発症した5症例を経験したので若干の考察を加え報告する.発症時期は妊娠初期が3例,妊娠中期が1例,妊娠末期が1例であった.妊娠初期では悪阻に伴う血液濃縮など,また妊娠末期では子宮増大に伴う静脈の圧迫などがDVTの誘因になっていると考えられた.5例ともAT3,プロテインC,プロテインSの欠損,また抗リン脂質症候群などの血栓素因は認めなかったが3例は開腹手術の既往がありDVT発症の高リスク群であった.症状は5例とも左下肢に関するもので入院時よりヘパリンの持続点滴を開始,さらに4例については下大静脈フィルターを使用した.うち4例は分娩に至ったが分娩様式は4例とも経腟分娩で妊娠・産褥期においてDVTの増悪を予防でき,かつPTEの発症も予防できた.(うち1例は現在妊娠進行中である.) 今回我々が検討した症例では妊娠初期,特に妊娠悪阻期に発症した症例が5例中3例と多数であった.このことから妊娠初期に適切な補液管理などを念頭においた適切な管理を行うことはDVT発症の予防に重要であると考えられた.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会誌, 45(3)
299-299, 2008
|