|
<< 学会誌へ戻る
<< 前のページへ戻る
第116回学術集会(平成20年11月29日(土),30日(日))
【一般演題】
胎児2 胎児腹腔内免疫グロブリン療法が有効であった血液型不適合妊娠の一例
太枝 美帆, 松田 秀雄, 吉田 昌史, 早田 英二郎, 渡辺 昭夫, 古谷 健一
防衛医科大学校産婦人科
妊娠中に血液型不規則性抗体が検出されるのは0.3%程度と報告されている.抗D抗体や抗c抗体のように胎児に重篤な貧血を及ぼすものが知られており,妊娠管理は慎重を要する.今回我々は抗M抗体による貧血胎児に対し胎児腹腔内免疫グロブリン療法が著効した症例を経験したので報告する.症例は23歳,0経妊0経産,輸血歴なし.妊娠16週時の母体血液型検査にて抗M抗体が検出され,間接クームス試験1024倍と判明し当院紹介受診した.今後の重篤な貧血発症を予測し厳重管理していた.妊娠30週時に胎児水腫の所見は認めなかったが,胎児中大脳動脈収縮時最大血流速度が77.8cm/sと急激に上昇したため胎児貧血を疑った.臍帯穿刺により臍帯血Hb:6.4g/dl,直接クームス試験陽性と判明した.当院倫理委員会の承認を得て説明と選択を経た上,中和抗体投与目的で胎児腹腔内免疫グロブリン療法(児推定体重1kgあたり2g)を計4回施行した.その結果,段階的にHb:11.5g/dlまで改善した.妊娠38週に計画分娩にて2600gの女児(Apgar score 9/10)が出生したが,新生児血Hb:15.4g/dlであり交換輸血の必要性はなかった.血液型不適合妊娠による胎児貧血に対しては胎児輸血が一般的である.胎児腹腔内への免疫グロブリン投与に関しては文献的報告もなく有効性を証明するには症例の蓄積が必要である.血液製剤使用の長短も含めて一考を示す.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会誌, 45(3)
305-305, 2008
|