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第116回学術集会(平成20年11月29日(土),30日(日))
【一般演題】
胎児2 胎内にて肝腫大を呈しMCA-PSV上昇により胎児貧血が疑われたTAMの一例
高橋 香織, 宮越 敬, 金 善惠, 浅井 哲, 峰岸 一宏, 田中 守, 末岡 浩, 青木 大輔, 吉村 泰典
慶應義塾大学病院産婦人科
【緒言】Transient abnormal myelopoiesis(TAM)とは,末梢血における一過性の白血球増加と芽球出現を特徴とする骨髄増殖性の病態である.今回我々は,胎内にて肝腫大を呈しMCA-PSV(中大脳動脈最高血流速度)の計測により胎児貧血が疑われ,生後に胎内発症のTAMと診断された一例を経験したため報告する.【症例】2経妊1経産,39歳.当院にて妊婦健診中,妊娠26週1日に切迫早産のため入院管理となった.妊娠30週3日,超音波スクリーニングにて児の腹囲(AC)拡大を疑ったが,明らかな形態異常を認めなかった.妊娠31週3日,ACは+2.3SDとなり低輝度均一で腫大した肝臓を認めた.その後,妊娠32週5日に肝腫大に加え少量の心嚢液と腹水が出現した.超音波所見より胎内発症のTAMの可能性を考え,MCA-PSVを用いた胎児貧血の評価を行った.妊娠33週0日に1.60MoMであったMCA-PSVは5日後には1.92MoMとなり,胎児貧血の進行が疑われた.家族に病状を説明し,新生児治療を目的として妊娠34週0日に帝王切開にて男児(出生体重2341g,Apgar score 2/6点)の分娩となった.児には白血球増多(24300/μl;芽球3%),貧血(Hb10.3g/dl)および肝機能低下を認めたが,生後約2週間で血液検査所見は正常化した.以上の臨床経過と染色体検査にて本症例はtrisomy21におけるTAMの胎内発症例と考えられた.【考察】本症例では腹囲拡大を契機に肝腫大を検出した.また,腔水症の合併よりTAMを疑い,MCA-PSV測定により病状の進展を評価することができた.TAMにおける腔水症の発症には肝線維症による低蛋白血症に加え胎児貧血の関与が考えられた.TAMの胎内発症例の超音波所見を中心に文献的考察を加えて報告する.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会誌, 45(3)
306-306, 2008
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