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第117回学術集会(平成21年6月14日(日))
【シンポジウム1】
産科における超音波診断 出生前診断のスクリーニング
林 聡
国立成育医療センター周産期診療部
最近の超音波診断技術の進歩は目覚ましく,今や胎児の状態をリアルタイムで観察することができるようにまでなってきた.また周産期医療での超音波検査は今や必要不可欠な検査であり,その役割は非常に大きく超音波検査なくして日常産科臨床を行うことはできない状況である.胎児超音波スクリーニング検査の目的は胎児異常や胎盤・臍帯異常を的確に診断することにより,適切な出生前の管理・治療(胎児治療)や出生後の管理・治療を児に提供すること,すなわち周産期管理向上のためである.胎児超音波スクリーニング検査は胎児超音波精密検査とその性質が異なり,一般妊婦というローリスクの母集団から,胎児異常を有する疑いのある精査すべき対象を超音波診断によって効果的に拾い上げる検査であるが,実際の臨床の現場では胎児超音波検査をどのような手順で,どの程度まで観察するかについて曖昧のまま検査を行っているのが現状と思われる. 胎児超音波スクリーニング検査の基本は的確な画像を描出し,画像の意味するところを正確に判断することである.またできるだけ簡便に行うことが可能で必要最低限の描出画像により,多くの異常を見出せることが重要である.以前より当センターでは胎児超音波スクリーニング検査として妊娠20週,28週前後の2回にわたる標準14画像の描出を推奨している.検査手順は胎位確認,胎児心拍確認,胎児推定体重測定,羊水量測定,胎児形態観察,胎盤・臍帯の順である.胎児形態の見方は,頭部(脳室横断面,小脳横断面で大脳,側脳室,小脳)から胸部(四腔断面,三血管断面で心臓,肺),腹部(胃,腎,膀胱)と胎児横断面で観察し,最後に胎児矢状断面で脊椎を観察する. また,このような胎児超音波スクリーニング検査は,一定のトレーニングを受けた医師や検査技師が一定の時間をかけて行うことが求められているが,一般妊婦健診の短時間に的確にスクリーニングを行うことは困難であり,また検査料金も適正な料金を請求せずに行っていることが多い現状において胎児超音波スクリーニング検査の体制を築くことも今後の課題とされる.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会誌, 46(2)
127-127, 2009
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