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第117回学術集会(平成21年6月14日(日))
【一般演題】
分娩1 胎盤 保存的治療を試みるも子宮摘出に至った嵌入胎盤の1例
水口 雄貴, 市川 義一, 岸見 有紗, 根本 泰子, 服部 政博
静岡赤十字病院産婦人科
【緒言】癒着胎盤は胎盤絨毛が子宮筋層内に侵入し,胎盤の一部または全部が子宮壁に強く癒着して胎盤の剥離が困難となるもので,剥離に伴い大出血をきたすこともあり,周産期母体死亡の原因の一つとして産科的に重要な疾患である.最近では保存的治療も試みられているが,子宮全摘を選択せざるを得ない場合も多い.今回我々は保存的治療を試みるも子宮摘出に至った嵌入胎盤の1例を経験したので報告する. 【症例】37歳,2経妊1経産,既往歴に特記事項を認めない.顕微授精―胚盤胞移植にて妊娠成立し,妊娠経過は良好であったが,予定日超過のため妊娠41週2日より陣痛促進剤で陣痛誘発し,妊娠41週3日に2926gの女児を経腟分娩した.児娩出後30分経過するも胎盤が娩出されず,経腹超音波断層法下で用手剥離を試みるも子宮底から前壁にかけて強固に癒着している胎盤を触知したため癒着胎盤を疑い用手剥離を中止した.分娩時出血量2000mlであったものの止血状態良好にて,二次感染/出血予防のため産褥1日目に静脈麻酔下に剥離部胎盤の部分摘出を行い,保存的治療を試みた.産褥11日目に施行した造影MRI検査で,筋層深部にまで造影効果を伴う胎盤を認め,嵌入胎盤もしくは穿通胎盤を疑った.さらに感染徴候が認められてきたため産褥13日目に腹式単純子宮全摘出術を施行した.病理組織検査において遺残胎盤絨毛の子宮筋層内への浸潤を認め,嵌入胎盤と診断した. 【結論】癒着胎盤に対する治療は子宮全摘が第1選択であったが,最近では保存的治療による成功例も報告されている.しかし出血や感染のコントロールがつかない場合は保存的治療に固執することなく子宮全摘に踏み切る必要があると考えられた.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会誌, 46(2)
146-146, 2009
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