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第117回学術集会(平成21年6月14日(日))
【一般演題】
分娩2 分娩時出血など 分娩時大量出血に対しクリオプレシピテートが有効であった1例
菊嶋 聡子, 大森 真紀子, 須波 玲, 奥田 靖彦, 端 晶彦, 平田 修司, 星 和彦
山梨大学医学部産婦人科
大量出血時には血小板,凝固因子の枯渇から止血不能,さらなる出血量増加をきたす危険性があるため,凝固因子の迅速な補充が必要となる.今回,帝王切開後の大量出血に対しクリオプレシピテートの投与が有効であった症例を経験したので報告する.症例は33歳,0回経妊.体外受精―胚移植により妊娠し,妊娠初期に一絨毛膜二羊膜双胎と診断された.妊娠32週に管理目的に入院し自己血600ml(濃厚赤血球と新鮮凍結血漿に分離)を貯血した.妊娠37週1日選択的帝王切開術を行い2512g男児と2650g男児を分娩した.胎盤は一部癒着しており用手剥離し子宮体部筋層に菲薄化した部分が生じた.子宮収縮不良のため子宮収縮剤を投与し子宮内に2mガーゼを充填した.術中出血量は羊水を含め849mlであった.帝王切開術後,血小板12.1×104/μl,fibrinogen 113 mg/dl,PT 13.7sec,FDP 178.3μg/ml,D-dimmer 90.9μg/mlで子宮出血は持続し,乏尿,肉眼的血尿も認めDICと診断された.自己血・新鮮凍結血漿の輸血,AT-III製剤の投与を行ったが出血は持続し1,446mlに達し止血困難であるため単純子宮全摘出術を行った.手術開始時血液は非凝固性で血小板8.9×104/μl,fibrinogen 101 mg/dl,PT14.4sec,D-dimmer82.3μg/mlであったが,クリオプレシピテート15単位を輸血した後止血が容易となり,血小板12.1×104/μl,fibrinogen 127mg/dl,PT 13.6secと改善した.術中出血量は2,613mlで術後出血は小量であった.分娩時大量出血に対しクリオプレシピテートの有効性が示唆された.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会誌, 46(2)
162-162, 2009
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