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第117回学術集会(平成21年6月14日(日))
【一般演題】
分娩2 分娩時出血など 肺塞栓様症状で発症し動脈塞栓術にて止血しえた産褥出血の1例
堀 晋一郎, 中村 泰昭, 清水 泰樹, 梅澤 幸一, 松本 幸代, 田口 彰則, 町田 亮太, 司馬 正浩, 木戸 浩一郎, 梁 栄治, 綾部 琢哉
帝京大学医学部産婦人科
今回我々は結果的には産褥出血によるショックに対し子宮を温存しえた一例を経験したので報告する.【症例】35歳,妊娠38週,前期破水にて入院,翌日,吸引にて分娩した.総出血量2500ml.その後,出血持続し下肢痛と呼吸苦(酸素マスク6LでSPO280%台)の訴えがあり搬送依頼となった.当院救急救命センターでの対応可能を確認し受け入れた.【来院時所見】JCSIII-300,血圧66/触知不能,脈拍114,呼吸18.血液ガス:SPO2 87%(マスク10L),pH6.44,PaCO2 57.8,PaO2 34.9,HCO3- 3.8,Hb 3.6g/dl.【入院後経過】気管内挿管し,輸血開始しつつ頭部・胸腹部CT施行した.塞栓等の所見は得られなかった.内診上,子宮体部の収縮は良好で頸管裂傷は認められなかった.超音波断層法では子宮は増大し頸部内腔に凝血塊様の所見を認めた.断続的に出血が持続し,輸血にもかかわらず,Hbの低下を認めたため,産褥2日に動脈造影を行った.右子宮動脈下行枝から造影剤の漏出を認めたため塞栓術を行った.その後は再出血なく,翌日,人工呼吸器管理から離脱した.【考察】1 周産期の緊急事態では病態と症状との間に乖離を認めることがあり,重篤な状態へ急激に変化しうるので,搬送依頼に際しては先入観に拘泥せず適切な問診や準備の必要性を再確認させられた.2 触診上,子宮収縮が良好な場合の出血原因としては,子宮頸管裂傷や間欠的な弛緩出血等が考えられる.本例では視触診上,頸管裂傷を認めず子宮体部の収縮が良好であるにもかかわらず充分な止血が得られなかったことから,頸管内側からの出血の可能性が高いと考えた.3 動脈塞栓術は動脈血管の断裂に由来する分娩時出血に有効な治療法と考えられた.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会誌, 46(2)
163-163, 2009
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