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第117回学術集会(平成21年6月14日(日))
【一般演題】
胎児異常3 腹部 ITP合併妊娠に胎児髄膜瘤を認め帝王切開時に破綻回避の工夫をした1例
青木 朝子, 窪田 文香, 橘 涼太, 橘 理絵, 山田 香織, 高木 靖
諏訪赤十字病院産婦人科
分娩時の胎児髄膜瘤の破綻は児の神経学的予後に影響するとの報告がある.今回我々は胎児髄膜瘤に加え,母体が特発性血小板減少性紫斑病(ITP)を合併しており,帝王切開術に様々な工夫を要した症例を経験した.症例は35歳の2回経産婦で,26歳時にITPと診断されたが特に治療されていなかった.既往分娩は2回とも帝王切開であり,いずれも術中に血小板輸血を要した.今回は妊娠21週でITP合併妊娠の管理目的に当科に紹介となった.母体血小板数は約5万/μlで非妊時と変化がなかったが,妊娠23週の胎児計測で軽度の小頭とIUGRを認め,妊娠26週には側脳室三角部幅が12.9mm,側脳室幅/大脳半球幅比が0.44と脳室拡大を認めたためこども病院産科へ精査を依頼した.妊娠32週のMRI検査で仙骨部脊髄髄膜瘤と両側側脳室拡大を指摘された.分娩管理は当院で行う方針となり妊娠34週に入院となった.反復帝切と胎児髄膜瘤の適応で選択的帝王切開とし,切迫早産の増悪のため妊娠36週に行った.帝王切開時の工夫として,羊水腔を維持したまま子宮下部のU字状の切開により十分な創を確保し,破膜後にシリコンカップで児頭を牽引しつつ児背を上に回旋させ肩甲まで介出した.第1助手は髄膜瘤に子宮壁が触れないよう用手的に創部を広げ,第2助手が髄膜瘤を直視下に保護しつつ介出した.髄膜瘤は啼泣と同時に膨隆し,洗浄後にガーゼとラップで保護し,県立こども病院へ搬送された.本例では血液内科だけでなく,新生児科・脳神経外科との連携も必要であり,胎内診断や分娩時の被膜破綻回避の意義は大きいと考えられた.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会誌, 46(2)
171-171, 2009
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