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第117回学術集会(平成21年6月14日(日))
【一般演題】
卵巣癌1 産褥1ヶ月で発見された進行卵巣癌の1例
齋藤 真由子, 織田 克利, 川名 敬, 有本 貴英, 土谷 聡, 松本 陽子, 曽根 国瑞, 中川 俊介, 矢野 哲, 上妻 志郎, 武谷 雄二
東京大学医学部附属病院産婦人科
一般的に卵巣腫瘍合併妊娠は全妊娠の1〜4%程度であり,そのうち悪性腫瘍は1〜3%と言われている.今回我々は,産褥1ヶ月健診時の腹水を契機に診断された,卵巣癌4期の症例を経験したので報告する. 症例は35歳,0経妊0経産.既往歴・月経歴に特記すべきことなし.当院での分娩を希望され,妊娠22週時に紹介初診.妊娠26週,経腟超音波検査にてDouglas窩に6cm大の充実性腫瘤が認められた.CA125は314 U/mlと上昇していたが,超音波検査上,腹水もなく,腫瘍内に明らかな血流を欠いていた.妊娠中は経過観察の方針としたところ,腫瘤に明らかな増大は認められず,妊娠40週で正常経腟分娩に至った.産褥1ヶ月健診の際,経腟超音波検査にて,著明な腹水と腹膜播種が認められ,卵巣癌が疑われた.腹水細胞診陽性で,CT上,両側附属器腫瘍(右径5cm,左径3cm),広汎な腹腔内播種の他,右傍胸骨に径2cm大(穿刺細胞診陽性)の遠隔転移が認められた.FDG-PETにてVirchowへのリンパ節転移も疑われた.卵巣癌IV期の診断にて,右附属器摘出術+大網生検+腹膜播種巣生検を施行.最大径3cmまでの播種が,直腸表面,膀胱子宮窩,回盲部,横隔膜下,大網など無数に存在していた.病理組織診断はserous adenocarcinomaで,術後TC療法(PTX;175mg/m2,CBDCA;AUC=6)を3コース施行.骨髄抑制が遷延したため,その後weekly TC療法に変更した.weekly TC療法2コース終了時点で,stable diseaseであり,今後も化学療法を継続予定である. 本症例のように,妊娠中の卵巣腫瘍の診断,悪性度の評価は非妊時に比べて苦慮することが多い.常に悪性の可能性も念頭においた診療が必要と考えられた.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会誌, 46(2)
178-178, 2009
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