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第117回学術集会(平成21年6月14日(日))
【一般演題】
卵巣癌2 卵巣境界悪性腫瘍に対する術前腫瘍マーカー値の後方視的検討(Stage I上皮性卵巣癌との比較)
小川 誠司, 片岡 史夫, 野村 弘行, 冨永 英一郎, 鈴木 淳, 津田 浩史, 進 伸幸, 青木 大輔, 吉村 泰典
慶應義塾大学医学部産婦人科
【目的】卵巣悪性腫瘍の治療前評価に関しては,画像診断に加えて腫瘍マーカーの役割は大きい.卵巣悪性腫瘍においては,腫瘍の量的・質的診断や病勢,治療効果判定の指標として腫瘍マーカーは,高い有用性が認められているが,境界悪性腫瘍に関する検討は少ない.今回,卵巣境界悪性腫瘍に関する腫瘍マーカー値の意義について検討することを目的とした.【方法】当院で同意を得て初回手術を施行した卵巣境界悪性腫瘍150症例を対象として,病理組織型,進行期分類を検討した.また,表層上皮性腫瘍症例における術前腫瘍マーカー値(CA125,CA602,CA546,CA19-9)をstage I上皮性卵巣癌症例と比較検討した.【成績】境界悪性腫瘍の84.0%(126/150)が表層上皮性腫瘍,8.7%(13/150)が性索間質性腫瘍,7.3%(11/150)が胚細胞腫瘍であった.表層上皮性腫瘍の組織型分類は,粘液性嚢胞性腫瘍が71.4%(90/126),漿液性嚢胞性腫瘍が23.0%(29/126)であり,2つの組織型で94.4%(119/126)を占めていた.進行期分類に関しては,境界悪性腫瘍の95.3%(143/150)がStage Iであった.腫瘍マーカーの陽性率の検討では,CA125は境界悪性腫瘍と癌の間で陽性率に差を認めなかったが,CA602,CA546,CA19-9は癌で有意に陽性率が高値であった(P<0.05).腫瘍マーカー値は,CA125,CA602,CA546,CA19-9のいずれにおいても,境界悪性腫瘍に対し癌で有意に高値であった.【結論】表層上皮性卵巣腫瘍において,癌では境界悪性腫瘍に比べ腫瘍マーカー値が有意に高値であり,特にカットオフ値の10倍以上を示す場合は,境界悪性腫瘍である確率は極めて低いと考えられた.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会誌, 46(2)
179-179, 2009
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