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第117回学術集会(平成21年6月14日(日))
【一般演題】
悪性腫瘍,その他1 ソマトスタチンアナログを用い保存的に治癒した卵巣癌術後の難治性乳縻腹水の1例
鈴木 はる奈, 野中 宏亮, 鈴木 達也, 町田 静生, 種市 明代, 竹井 裕二, 藤原 寛行, 鈴木 光明
自治医科大学産婦人科
乳縻腹水は腹部手術後や放射線治療後の合併症として報告されている.今回我々は卵巣癌術後の難治性乳縻腹水に対して,ソマトスタチンアナログであるオクトレオチド使用により改善した症例を経験したので報告する.症例は55歳,2経産.卵巣癌の診断で単純子宮全摘・両側付属器切除・大網亜全摘・左腎静脈下縁以下の系統的後腹膜リンパ節郭清術を施行した.手術はoptimalだったが,腹腔内に数mm大の播種が多数残存した.病理結果は左卵巣漿液性腺癌,腹膜播種・大網播種・傍大動脈リンパ節転移陽性でstageIIIc,pT3bN1M0.経過良好で術後8日目に退院したが,術後14日目に腹部膨満で再入院した際,正中の創部が離解し黄白濁腹水が流出していた.入院時体重は45kg,腹水の流出は6L/日あり,その性状から乳縻腹水と診断した.直ちに絶食,中心静脈栄養管理とし,利尿薬の内服を開始したところ,術後22日目には腹水の創部からの流出が無くなり創離解部は自然閉鎖,体重は42kgまで減少した.しかし創の閉鎖に伴い腹水が腹腔内に再貯留し,体重は46.5kgまで増加したため,術後33日目からオクトレオチド300μg/日皮下注を開始した.開始後徐々に貯留腹水は減少し,術後41日目には体重41kgとなり,オクトレオチドを漸減し非脂肪含有食を開始した.その後脂肪食を開始したが腹水の増加を認めず,術後54日目でオクトレオチド投与を終了し,術後65日目に退院となった.オクトレオチドの乳縻腹水に対する作用機序はまだ不明だが,脂肪吸収抑制などによるリンパ流減少,あるいはリンパ管への直接作用などが推測されている.術後の難治性乳縻腹水に対してソマトスタチンアナログの使用も検討すべき治療法と考えられた.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会誌, 46(2)
181-181, 2009
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