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第117回学術集会(平成21年6月14日(日))
【一般演題】
妊娠3 合併症妊娠1 バセドウ病治療後甲状腺機能低下症合併妊娠で新生児バセドウ病を認めた1例
深川 富美子, 牧野 康男, 松田 義雄, 由井 瞳子, 川道 弥生, 小林 藍子, 高橋 伸子, 蔵本 吾郎, 酒井 牧知子, 村田 眞紀子, 三谷 穣, 太田 博明
東京女子医科大学産婦人科
抄録:今回われわれは,バセドウ病治療後の母体より出産した新生児にバセドウ病を発症した症例を経験したので報告する.症例は33歳,初産婦で2年前にバセドウ病と診断された.挙児希望あり,PTU治療開始したが肝機能障害を生じたため,当院放射線科にてバセドウ病に対しアイソトープ治療が施行された.その後甲状腺機能低下症となり,甲状腺ホルモン剤の内服にて甲状腺機能は正常であった.アイソトープ治療後1年で妊娠し,妊娠34週の超音波検査で心横径が42mmと胎児心拡大を認めたため,精査入院となった.胎児の心奇形は認めず,母体甲状腺刺激抗体(TRAb)は112%であった.胎児に甲状腺腫は認めなかったが入院後より徐々に胎児心拍数が上昇し,僧帽弁逆流などの心負荷増大もみられたため36週に分娩誘発とした.分娩中,遅発一過性徐脈が出現し,胎児機能不全の診断で緊急帝王切開を施行した.児は2858g,Apgar score8/9 UApH 7.339であった.X線にて手根骨と膝蓋骨の骨肥大を認め,血液検査にてTRAb111%,TSH低下,fT4の上昇があったため新生児バセドウ病と診断された.症状はなく無投薬にて経過観察としていたが,第7生日目に甲状腺ホルモンの更なる上昇と心拍200台の頻脈を認めたため,βブロッカーと抗甲状腺剤が開始された.第19生日目に頻脈改善によりβブロッカーを中止,第27生日目に抗甲状腺剤も中止とし,現在に至るまで症状なく経過観察中である.甲状腺疾患合併の母体においては,甲状腺機能が正常であっても,新生児にバセドウ病を発症することがあり,注意深い観察が必要と考えられた.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会誌, 46(2)
186-186, 2009
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