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第117回学術集会(平成21年6月14日(日))
【一般演題】
妊娠3 合併症妊娠1 妊娠中に重症膵炎を発症し,母体救命のため人工妊娠中絶を選択した一症例
松島 実穂, 西村 修, 井口 蓉子, 宮村 浩徳, 落合 大吾, 森定 徹, 矢久保 和美, 福井谷 達郎
さいたま市立病院産婦人科
妊娠中に膵炎を合併する頻度は0.03%と稀であるが,重症化すると母子ともに急速に重篤な経過にいたる予後不良な疾患とされている.今回我々は,妊娠中に慢性膵炎の急性増悪を来し,母体救命のため人工妊娠中絶を選択した重症膵炎の一症例を経験したので報告する.患者は29歳の2経妊2経産婦.嗜好歴として,焼酎5-6杯/日の飲酒を約10年間続けていた.21歳時にアルコール性慢性膵炎と診断された.平成20年10月頃より咳嗽及び呼吸苦を主訴に前医受診したところ,胸腹水の貯留を認め慢性膵炎の急性増悪の診断にて入院となった.約1ヵ月間にわたり絶飲食及び中心静脈栄養による管理とメシル酸ガベキサートによる膵炎の治療を行ったが,症状は軽快せず精査加療目的に当院内科へ転院となった.入院当日に施行した造影CTにおいて膵臓内に多発する膵石像と多房性の巨大膵仮性のう胞を示し,膵臓周囲には仮性のう胞の胸腔内破裂像及び多量の胸水を認めた.臨床症状及び画像所見から重症膵炎と診断した.またCT上,偶発的に胎児を認めたことから妊娠が発覚し,児の推定体重から妊娠18週6日と診断した.膵管減圧目的にENBD(Endoscopic nasal biliary drainage)を施行し,また著明な胸水貯留に対して胸腔ドレーンを留置した.明らかな症状の改善は見られないことから,母体の全身状態を考慮し,本人と家族の強い希望もあり,妊娠19週6日プレグランディン腟錠による中期中絶を厳重な全身管理のもと施行した.分娩後,母体の全身状態及び膵炎は改善傾向を示し分娩後12日目に軽快退院となった.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会誌, 46(2)
188-188, 2009
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