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第117回学術集会(平成21年6月14日(日))
【一般演題】
内分泌,思春期・更年期 複数の合併症を発症した抗リン脂質抗体症候群妊婦の一例
千代田 達幸, 丸山 哲夫, 小田 英之, 各務 真紀, 西川 明花, 内田 浩, 田中 守, 青木 大輔, 吉村 泰典
慶應義塾大学医学部産婦人科
【背景】抗リン脂質抗体症候群(APS)合併妊娠では,高率に動静脈血栓症や子宮内胎児死亡・発育遅延などが発生する.われわれはAPSに加えて複数の合併症を発症した妊婦において,周産期管理に苦慮しながらも生児を得た症例を経験したので報告する.【症例】31歳時に甲状腺機能低下症のため内服治療を開始した2経妊0経産婦(人工妊娠中絶1回).前回妊娠時に妊娠5週5日で手指の動脈血栓症を発症し,抗カルジオリピン(CL)抗体強陽性,CL-β2GP1強陽性であり,APSの診断で当科を妊娠8週5日で受診した.急ぎ低用量アスピリン療法(LDA)を開始するも妊娠9週3日で流産となり,その後もLDAおよび甲状腺ホルモンの内服を継続し,35歳時に自然妊娠した.妊娠4週5日よりLDAに加えて未分画ヘパリンの投与を開始し,妊娠17週で妊娠糖尿病と診断のうえインスリン投与を開始した.また,妊娠経過中に汎血球減少の傾向を認めた.妊娠32週に右下腿浮腫を認め,下肢静脈超音波検査で深部静脈血栓症(DVT)と診断し,ヘパリン持続投与を開始した.その後,汎血球減少の増悪を認めたため,骨盤内に明らかな血栓の無いことをMRAで確認したうえで,関連各科との連携のもと妊娠35週1日に全麻下予定帝王切開術を行い2165g APGAR 2/9の女児を娩出した.術後はGICU管理としたが経過は良好であった.ただしDVTは残存しており,ワーファリンの内服を継続している.【結語】関連各科との連携が十分可能な医療機関においてAPS合併妊婦を管理する必要性を再認識した一例であった.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会誌, 46(2)
209-209, 2009
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