|
<< 学会誌へ戻る
<< 前のページへ戻る
第118回学術集会(平成21年11月7日(土),8日(日))
【シンポジウム1】
Reproducing産婦人科医 見直された臨床研修 専門研修と臨床実習の狭間で
田中 雄二郎
東京医科歯科大学医学部附属病院臨床教育研修センター
専門研修の準備という新たな位置付け 発足後5年を経た臨床研修制度が見直され,平成22年4月採用の研修医から適応される.要点は,専門研修への準備期間という概念の導入である.大規模研修プログラムには,産婦人科,小児科重点プログラムの併設が義務づけられた.必修科は内科,救急,および地域(それぞれ6ヶ月,3ヶ月,1ヶ月以上)に限定された.外科,産婦人科,小児科および精神科は麻酔科と共に選択必修となり,1ヶ月以上という期間の縛りも無くなり,極言すれば1日の研修でも可となった.その結果,事実上専門研修を1年前倒しで開始できる形となった.他方,基本的臨床能力養成という研修目標は維持され,例えば,妊娠分娩(正常妊娠,流産,早産,正常分娩,産科出血,乳腺炎,産褥)は外来または入院で経験しなければならない.そのため従来の研修プログラムを維持した研修病院も多く,医師として最初の2年間の修練期間の内容は,施設によっても,個々の研修医によっても大きく異なることとなった.また,実質的に専門研修が前倒しされるかは研修医の動向にかかっている.即ち,見直し前のように,専門を決める前の「お試し期間」として自由選択研修期間を利用していた時代から,どの程度動向が変わるかどうかによる. 卒前臨床実習との連携は可能か 基本的臨床能力養成という目標を維持しつつ研修の自由度を拡大した背景には,卒前臨床実習の充実が前提となっている.しかしながら,延べ3日間600問の多肢選択問題が課される国家試験の準備のために,臨床実習は早期終了もしくは形骸化を余儀なくされている.また,大学病院でさえ学生の診療参加に患者の協力を得ることがしばしば困難な状況がある.この事態を踏まえ学生による診療参加の質を担保するため全国共用試験という知識と実技を問う試験が全ての医学部で実施されているが,合格基準が個々の大学に委ねられている他,法的裏付けもない. 専門研修と臨床実習の狭間で 全国共用試験を基本的知識と臨床技能を問う試験として法的根拠を付与すれば,診療参加型臨床実習の実質化が可能となり,実習評価を卒業試験に代えればさらに充実が図れる.卒業時点で診療参加の経験に基づく臨床推論と技能を問う簡素な国家試験を実施し,より高度な基本的臨床能力を卒後1年目に研修し,その後専門研修への準備期間としての1年間の研修を行うよう位置付けを明確にすれば,社会的にも理解が得られやすいのではないかと考える.臨床研修制度は基本的臨床能力養成という理念を掲げ税金が投入されている.理念に応じた研修の質の保証をどうするかが重要な課題となっている.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会誌, 46(3)
240-240, 2009
|