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第118回学術集会(平成21年11月7日(土),8日(日))

【シンポジウム2】
産婦人科 in Emergency
母体搬送の現状と問題点:都市部中核病院の立場から


松岡 隆
昭和大学総合周産期母子医療センター


周産期の患者搬送は複数科の協力が必要で,そのシステムの運用にはまだいくつかの課題が残されている.特に,母体の救命処置が必要な重症の合併症を有する妊婦の場合,既存のシステムでは対応しきれないことがある.昨年,母体転帰不良の症例が東京都で発生したのは記憶に新しい.3次施設を多く持つ大都会東京で何故その様なことがおきたのか,大都市だからおきたのか?大都市における母体搬送の現状と問題点を都市部中核病院の立場から述べたい.当院で2005年4月〜2009年4月までの12週以降の分娩は4712件あり,紹介例は30%で,患者居住区の割合は81%が都内で19%が都外であった.救急母体搬送症例は2.4%の171例であるが,22週以降に限ると4%となる.この171例に外来経由のハイリスク症例は含まれていない.2008年の22週以降の母体搬送依頼件数は201件有ったが,受け入れることを出来たのは31.8%であった.搬送不可の理由は137例中の127例がNICU満床であった.東京都では総合周産期母子医療センターに担当ブロックの責任を持たせているが,ブロック外や都外からの搬送症例も多い.また分娩施設の減少により,ミドルリスク,ローリスクの症例も3次施設に集るため,突発的に発生する重症症例や本来見るべきハイリスク症例に対応することが困難となっている.また,搬送の受け入れを決定するためにはNICUの空床情報,手術室の状況,場合によっては救急救命や他科の状況を考慮し決定する必要があり,電話を受けた医師がケースバイケースで交渉を行い判断するには時間を要する.そこで,東京都では今年度より,重症症例が発症した場合の搬送システムを既存のシステムの上に構築した(スーパー母体搬送).スーパー母体搬送においては搬送元の医師が早急な母体の救命処置が必要,もしくは重症な産科的救急疾患と判断した症例で直近の施設が受け入れ困難の場合は,輪番制で担当するスーパー総合周産期母子医療センターに搬送されるようになった.当番病院は必ず受け入れなければならない.これにより,搬送先施設選定時間が減ったこと,搬送元でのトリアージが以前よりしっかり行われるようになったことと,搬送を受け入れるかどうかの交渉が無くなり担当医のその負担がなくなった等の効果が挙がっている.システム維持の必要条件はやはりマンパワーであり,人員の確保が最も重要で最優先されるべき事項である.3次施設を多く持つ大都市はその選択肢の多さと,お互いのもたれ合いにより動きが重くなってしまう.1次,2次,3次の施設が連携を保ちつつ,それぞれしっかり自立し診療に当たることが最も大事なことであると思う.3次施設は,本来常に空床を持って運用すべきであり,それにより,突発発症の症例や重症症例への対応が万全になると思われる.


日本産科婦人科学会関東連合地方部会会誌, 46(3) 243-243, 2009


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