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第118回学術集会(平成21年11月7日(土),8日(日))
【一般演題】
優秀演題賞候補(腫瘍) 不妊治療を行い妊娠,出産後子宮内膜症性嚢胞から卵巣明細胞腺癌への悪性転化を来した3症例
魚谷 隆弘, 市川 美和, 長井 智則, 斉藤 正博, 高井 泰, 高木 健次郎, 林 直樹, 馬場 一憲, 関 博之
埼玉医科大学総合医療センター産婦人科
【緒言】近年,子宮内膜症性嚢胞の約1%に卵巣癌を発症し,中でも予後不良な卵巣明細胞腺癌が多いことが報告されている.今回我々は,子宮内膜症患者に対し不妊治療を行い,妊娠,出産に至るも,その後卵巣明細胞腺癌への悪性転化を来した3症例を経験したので報告する.【症例】1)36歳2経妊1経産.21歳時,腹腔鏡下子宮内膜症性嚢胞摘出術(LC)施行後不妊治療2年で体外受精により妊娠.出産5年後に腹痛で当科受診し,15cm大の卵巣腫瘍を指摘され根治術の結果,卵巣明細胞腺癌IC期の診断.術後化学療法施行中である.2)32歳2経妊1経産.25歳時にLC施行.不妊治療3年で体外受精により妊娠.産後11か月で月経不順認め当科受診し,10cm大の卵巣腫瘍を指摘,根治術の結果,卵巣明細胞腺癌IC期と診断,術後化学療法施行.術後3年再発を認めていない.3)45歳1経妊1経産.26歳時,LC施行後不妊治療開始し,40歳時,顕微授精により妊娠.出産3年後下腹部痛のため当科受診し3cm大の子宮内膜症性嚢胞を指摘され3-4カ月毎に経過観察.16カ月後に腫瘍がやや腫大し充実性部分を認め,根治術施行.卵巣癌IC期の診断で化学療法施行.術後1年再発を認めていない.【結語】これら3症例中,2症例は悪性転化後の受診で,1例は経過観察中の悪性転化であった.不妊症患者は出産が最終到達点と考えやすいが,子宮内膜症合併患者は産後も長期的管理を行い,悪性化を見逃さぬよう厳重に観察すべきであると思われる.卵巣切除に踏み切るタイミングについてはなお一層の議論を要すると思われた.また,現時点では排卵誘発剤の使用と卵巣癌の明らかな相関はないとされているが,今後の検討課題と考えられる.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会誌, 46(3)
250-250, 2009
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