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第118回学術集会(平成21年11月7日(土),8日(日))
【一般演題】
胎児異常2 児が壊死性腸炎に伴う消化管穿孔を来した抗リン脂質抗体症候群合併妊娠の1例
中原 万里子, 田中 利隆, 山口 貴史, 今井 幸, 斉藤 知見, 宮川 美帆, 輿石 太郎, 太田 篤之, 杉村 基, 竹田 省
順天堂大学産婦人科
緒言 抗リン脂質抗体症候群(APS)合併妊娠では,母児ともに重篤な合併症をきたす可能性があり,厳重な管理が必要とされる.今回SLE,APS合併妊婦から出生した児が壊死性腸炎をきたした一例を経験したので報告する.症例 40歳,1経妊1経産(妊娠高血圧症候群(PIH)のため25週0日で緊急帝王切開).26歳にSLE発症しプレドニゾロン10mg/日内服していた.自然妊娠成立し経過観察していたが,28週頃より子宮内胎児発育遅延を認めた.33週に母体LAC陽性,APSの診断基準を満たしたが明らかな症状は認めなかった.34週BP144/97mmHg,PIHの診断で管理入院となったが,母体血小板数低下と胎児の発育遅延著明となったため,36週0日帝王切開を施行した.児は1664gの男児,Apgar score 4/7で,出生後NICU入院となった.児はLAC陽性,日齢2に血便,日齢3に腹部レントゲン上free airを認めたため,消化管穿孔の疑いで緊急手術を施行,横行結腸に壊死を伴う15mm×5mm大の穿孔を認めた.壊死性腸炎による消化管の診断で加療を行い,現在経過良好である.考察 母体APSは胎盤に血栓を生じ,子宮内胎児死亡や発育遅延を来す.またAPS母体児は30%の頻度で受動的に抗リン脂質抗体が陽性となり,希ではあるが児に血栓症を発症することがある.児が血栓症をきたすリスク因子として,仮死・発育遅延・カテーテル留置などが報告されており,今症例もこれらを認めていた.このように児が抗リン脂質抗体陽性かつその他のリスク因子を認める場合は血栓症のハイリスク群として管理する必要があると思われた.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会誌, 46(3)
259-259, 2009
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