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第118回学術集会(平成21年11月7日(土),8日(日))
【一般演題】
胎児異常4 CTGにて“sinusoidal pattern”を認めた新生児消化管出血の1例 〜MCA-PSVのピットフォール〜
高見 美緒, 田中 智子, 榎本 紀美子, 吉崎 敦雄, 三原 卓志, 小川 幸, 石川 浩史
神奈川県立こども医療センター産婦人科
【緒言】胎児心拍陣痛図(CTG)におけるsinusoidal patternは重症貧血胎児(血液型不適合妊娠や胎児母体間輸血症候群など)に伴い出現するとされるが,実際に遭遇することは稀である.今回われわれは,sinusoidal patternの原因が新生児小腸軸捻転,腸壊死による出血性ショックであった1例を経験したので報告する.■【症例】41歳,初産婦.前医で妊娠管理され特に異常を指摘されていなかった.妊娠32週5日より胎動減少を自覚し,33週0日に前医を受診.超音波で胎児腸管拡張像を認め,CTGにてsinusoidal patternを呈したため,同日当院へ母体搬送となった.当院でのCTGも典型的なsinusoidal patternであったが,胎児中大脳動脈最高血流速度(MCA-PSV)60cm/秒と軽度上昇程度であり,胎児貧血の有無について確証は得られなかった.また限局性の腸管拡張像を認めた.胎児機能不全および胎便性腹膜炎の疑いにて,同日緊急帝王切開術を施行した.児は2350gの女児,Apgar score 4/7点(1/5分).出生時より全身蒼白であり,重症貧血(Hb 4.4g/dl),低血圧(65/35mmHg),出血性ショック状態であった.小腸軸捻転および腸管内出血と診断し,日齢1に開腹手術を施行したところ,小腸軸捻転による拘扼性腸閉塞・腸壊死をきたして消化管出血をきたしていた.小腸部分切除(40cm)を施行した.術後経過良好であり,生後45日目に退院した.■【結語】本症例では胎児が急性失血により出血性ショック・重症貧血をきたし,CTGにてsinusoidal patternを呈したと推測される.しかし胎児貧血の診断に有効とされるMCA-PSVは,軽度の上昇にとどまった.急性の胎児貧血の場合には,MCA-PSVが必ずしも上昇するとは限らない可能性が示唆された.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会誌, 46(3)
265-265, 2009
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