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第118回学術集会(平成21年11月7日(土),8日(日))
【一般演題】
胎児異常4 繰り返す子宮内胎児発育遅延を治療する胎盤病理
有澤 正義1), 岩田 みさ子2)
東京都立大塚病院病理1), 東京都立大塚病院産婦人科2)
【目的】子宮内胎児発育遅延(以下IUGRと略す)の中に繰り返す症例がある.その原因については多くの場合,原因検索をされないまま放置される.今回われわれは,なぜ胎児が育たないのかということに対し,胎盤を病理学的に検索し当院の治療指針を確立する.【対象】4例の繰り返すIUGRの胎盤と臨床像.【結果】症例1は2回の妊娠中毒症(以下PIHと略す),IUGR,早産歴のある妊婦で,今回は11週から低用量のアスピリンが使用された.37週で2665gの児を得た.前2回の胎盤所見は血栓,梗塞や強い虚血性変化を示した.今回はごく軽い虚血性変化のみであった.症例2は子癇発作,IUGRで搬送された妊婦で2回目は24週から低用量アスピリンが使用され40週で2640gの児,3回目は14週からアスピリンが使用され40週で2950gの児を得た.いずれも胎盤には虚血性変化を認める.その程度は,3回目と1回目に比べると3回目は軽い.症例3はいずれの妊娠もPIH,IUGRが合併していたが,アスピリン療法はされていなかった.1回目は27週で常位胎盤早期剥離を合併し,690gの児は2週間で死亡した.2,3回目は30,31週のPIH,IUGRであった.3回の胎盤検査はいずれも強い虚血性の変化を示した.症例4は,PIHの合併もアスピリン療法もなかった.妊娠中の染色体検査,胎児超音波検査で異常なく,新生児にもIUGR以外の異常はなかった.胎盤病理検査では虚血性変化はなかった.胎盤が小さく,臍帯が細く,胎盤表面の血管が細かった.【考察】IUGRの胎盤に虚血性変化,血栓,梗塞があれば次回はアスピリン療法が勧められる.原因不明の全く正常の小さな児といわれるものの中に梗塞や虚血性変化のない胎盤および臍帯の発育異常がある.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会誌, 46(3)
265-265, 2009
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