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第118回学術集会(平成21年11月7日(土),8日(日))
【一般演題】
産科救急疾患 急性妊娠脂肪肝の一例
中山 真人1), 高井 泰2), 松村 英祥2), 村山 敬彦2), 斉藤 正博2), 高木 健次郎2), 馬場 一憲2), 関 博之2)
埼玉医科大学産婦人科1), 埼玉医科大学総合医療センター産婦人科2)
【緒言】急性妊娠脂肪肝(AFLP)は稀な疾患ではあるが,発症後急速に肝不全,DICへ進行するため早期の診断と適切な管理を要する.原因として胎児のミトコンドリアにおける脂肪酸β酸化異常などが報告されている.今回我々はAFLPの一例を経験したので報告する.【症例】43歳2経妊1経産.既往歴や妊娠歴に異常はなく,今回も妊娠31週まで順調だった.妊娠32週1日頃より口渇症状と3〜4L/日の飲水を認めたが,糖尿病は否定された.妊娠36週3日,全身の著明な黄疸と乏尿を認めたため前医搬送.前医で肝機能異常,腎不全,DIC徴候を認め,同日当院救急搬送となった.多量の性器出血とCTG上NRFSを認め,HELLP症候群,常位胎盤早期剥離,急性妊娠脂肪肝などを疑い,緊急帝王切開にて3386gの生児を得た.術前より抗DIC治療として輸血,FOY,AT製剤を,術直後より人工透析を開始した.術後1日目,急性妊娠脂肪肝の診断のため肝の針生検施行.術後3日目に術中子宮内に充填したガーゼを抜去したところ,多量の性器出血および腹腔内出血(推定総出血量21,000ml)を来たしてDICが再燃し,大量輸血,子宮および肝に対する3回のTAE,各種凝固因子製剤などで止血,救命し得た.母児の血清を用いてタンデムマス解析を施行したところ,新生児に異常はなく,母親で遊離カルニチン高値,中鎖〜長鎖アシルカルニチンの広範な上昇を認めたため,酵素活性を解析中である.【結語】AFLPは臨床症状と検査データからほぼ診断可能であり,肝生検は術中もしくは凝固機能が回復後に行うのが望ましい.母児の脂肪酸代謝異常の有無を検索することにより,新生児の発症を早期発見できるばかりでなく,AFLPの病態を解明できる可能性がある.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会誌, 46(3)
266-266, 2009
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