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第118回学術集会(平成21年11月7日(土),8日(日))
【一般演題】
早産 切迫早産にて搬送入院後の帝王切開の術式決定にMRIが有用であった前置血管の1症例
池ノ上 学, 宮越 敬, 梅津 桃, 田中 守, 金 善惠, 峰岸 一宏, 青木 大輔, 吉村 泰典
慶應義塾大学医学部産婦人科
前置血管とは臍帯卵膜付着の血管が内子宮口近傍に位置する病態であり,分娩前未診断例では破水時に卵膜血管が破綻し胎児死亡に至るとされている.今回我々は,前置血管に加え内子宮口から子宮前壁を底部まで走行する卵膜血管を認め,帝王切開時の加刀部位を決定するにあたりMRI検査および術中超音波検査が有用であった症例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.【症例】症例は34歳の初産婦.自然妊娠成立後,近医にて妊婦健診を受けていた.妊娠25週5日,切迫早産および絨毛膜羊膜炎疑いにて当院に搬送入院となった.入院時,子宮頸管の観察の際に内子宮口を覆って走行する卵膜血管を検出し,前置血管と診断した.さらにカラードプラ法およびMRI検査にて,卵膜血管は内子宮口から子宮前壁の中央やや左側に沿って縦走することが判明した.妊娠27週3日,子宮収縮の増強および変動一過性徐脈を認めた.子宮口は開大し,視診にて卵膜血管を伴う胎胞の脱出を認めたため緊急帝王切開術を行った.術中超音波を用いて卵膜血管の走行を確認し,その破綻を回避しながら古典的子宮切開を行った.児の出生体重は1048 g,Apgar scoreは8/9点(1/5分値)であった.娩出された胎盤および卵膜には術前所見に一致して臍帯卵膜付着および広範囲にわたり走行する卵膜血管を認めた.【結語】前置血管を見落とさないためには,経腟超音波検査において頸管のみならず内子宮口近傍の超音波像も注意深く観察することが必要である.また,本症例においてカラードプラ法およびMRI検査は卵膜血管の走行を確認し,帝王切開の術式を決定する上で有用であった.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会誌, 46(3)
269-269, 2009
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